デジカメ黎明戦記(5)〜W31CAのカメラ性能がエモ過ぎた
リコーRR10というヘンテコなデジカメを買ったせいで、再びデジカメ離れが加速。「携帯(当時はガラケー)で良いじゃん」との思いが強まっていた2003〜2008年でした。ガラケーのカメラ機能ばかり活用するようになっていました。
ガラケーのカメラを色々試しているうちに巡り合ったのが、伝説のガラケー、カシオ「W31CA」でした。
【W31CA:基本スペック】
センサーサイズ:1/1.8型 CCD
画素数:320万画素(1280×960 SXGA)
焦点距離:非公表 :約35mm相当?(35mm判換算)AF搭載
絞り:非公表
発売:2005年夏モデル(au)
カシオW31CAは、2005年夏に登場したガラケーで大きなレンズを持つカメラが特徴的でした。CCD 320万画素を持つ高画質がウリで、私はこのカメラ性能にとても共感を覚えました。
論より証拠。以下、W31CAでの作例をご覧ください。
W31CAは当時のガラケーとしては高画素でしたが、とはいえ専用コンデジと比較すると解像度の粗さは否めません。ですが、兎に角その出力される写真の描画がハンパなく「エモい」のです。例えば上記の写真、昼から夕方に差しかかる陽が少し傾き始めた柔らかな光の加減が表現されていると考えます。
次に白樺を写したこの写真。影となっている部分も階調豊かに黒潰れせず描画しています。また樹々の葉も色鮮やかに描画されているのが分かりますね。少しシャープネスがキツめに出てはいますが、嫌な感じはしません。
当時、奥サマとよく通っていたカフェにて。明暗差の激しい場面で窓の外は白トビしていますが、窓際に置かれた観葉植物の葉にあたる光を再現してくれて葉に立体感が感じられます。手前に置いたバッグが黒潰れしていないのも良いですね。
スポットライトで陰影差の激しいショールームにて。車体の艶やかさと鋭いエッジの両面が描画されている他、影となった部分も潰れずに残っている事が分かります。
札幌にかつて存在した「石渡紅茶」。1997〜2013年末まで営業していたこのカフェは美しい店内が印象的でした。シャンデリアの光芒が美しく広がっているのが分かります。
鮮やかな青空に柔らかさを添える雲の存在を繊細に描画してくれています。右のマンションから判るように、若干、歪曲収差は目立つものと中央部分と四隅で色調が若干異なるという話もありましたが、私は許容範囲でした。
ガラケーのカメラとは言え、1/1.8型センサーと当時では大型なセンサー搭載していた事もあり、ボケも表現されていて奥行き感に繋がっています。
こうした懐の深い「エモい」描画を実現してくれ、いま見ても古臭さを感じさせない写真に仕上がっています。
このようにW31CAは今振り返っても素晴らしいカメラ性能ですが、残念な点が1つあります。それは、カメラ性能がウリなのに、肝心のカメラ仕様の詳細が「非公表」な点が残念です。
例えば焦点距離。カメラを選ぶ際に最も重視する要素の1つなのに、それが公表されていないのです。感覚的には35mm弱かな?という感じ。また、レンズの明るさも非公表で、これらはEXIF情報にも現れてきません。
3年ほど愛用していたのですが、残念なことに上記画像のように壊れてしまいました。
その後はカシオの後継機種W61CA(515万画素/焦点距離28mm相当/f2.8)や、W63CA(809万画素/焦点距離28mm相当/f2.8)、そしてソニーエリクソンSO905iCS(510万画素/焦点距離35〜105mm相当/f2.8〜5.4)なども使ってみましたが、いずれも既に時代はCMOSセンサー搭載機となっており、W31CAのような旧アーキテクチャなCCDセンサーによる懐の深い描画には至っておりません。
私は、このW31CAでデジカメによるエモーショナルな写真描画に目覚めました。〔つづく〕