中高年の耳に、ハイレゾは不要論


「このキーンって音、不快なのでスピーカーの音を一旦切っても良いですか?」そう言われ、え?って思った事があります。とある会場に設置されたスピーカー、集まった20代前半の若者たちからそう指摘を受けたとき、私にはその音が聴こえませんでした。

・・・いわゆるモスキート音と言われるものを初めて体感した瞬間です。

 

検証サイトで試したところ、40代後半の私はどうやら15kHz以上の高音は殆ど聴こえないことが判明します。40代になると15kHz以上の高音が聴き取れないのは一般的なことのようですが、少なからずショックではあります。

この経験から感じたこと・・・それは「中高年の耳に、ハイレゾは不要」という不都合な事実。「お前の老いた耳では聴き分けできんよ!」という悲しい現実であります。

  

KZ ZAX - 16 Unit Hybrid Technology Earphone.

加齢による耳の劣化問題について超高周波の研究をしている大学教授にインタビューした記事がPC Watchのサイトに掲載されていますが、要するに「聴こえはしないけど超高周波は様々な心理反応を誘発」することが分かります。よって可聴帯域を大きく超えたハイレゾに意味がないとは言えない(効果がある)とのこと・・・うーむ。

 

私がハイレゾ音源を愉しむ際は、ハイレゾ対応のプレイヤー(DAP)とイヤホンを専用で用いています。DAPは、中国FiiO社より2014年に発売された「FiiO X1」という古い機種で、当時2万円程度とハイレゾ対応としては最廉価でした。とは言え、性能的には192kHz迄のサンプルレートに(=96kHzの音域まで)対応しており、内蔵されるDACやヘッドフォンアンプの性能とあわせ必要十分。

このDAPに組み合わせるイヤホンは、中国KZ Acoustics社の「KZ ZAX」という2020年に発売されたもの。バランスドアーマチュア型とダイナミック型という2つの要素で構成されており、価格も7,000円程度ながら素晴らしい音を奏でてくれることで有名です。 

このように、再生装置もイヤホンも中華製な訳ですが、前述のように所詮は”聴き取れていない音”を鳴らすための装置ですからね(苦笑)。なんとも矛盾していますが、まぁそんなモンなんでしょう。

 

私は「ハイレゾだから音が良い」とは考えず、ハイレゾであれCDであれ古いアナログレコーディング時代の音源であれ、ちゃんと綺麗に録音された=レコーディングエンジニアが頑張って良い仕事をした音源は、どれも本当に美しい音色を奏でてくれると考えています。

例えば、マーヴィン・ゲイの歴史に残る名アルバム「What’s going on」は、1971年のレコード盤を皮切りに、様々なリマスター盤が発売されていますが、私が聴いた中では新しいデジタルリマスター盤が最も綺麗に聴こえました。同じ音源でも仕上げによって大きく異なるものです。 

こうした美しい音を収録したCDに巡り逢える事を喜びとしている私としては、当然、音質に意識を研ぎ澄ましたハイレゾ盤はレコーディングエンジニアの粋が詰まった名盤揃いなのでハズレが無く重宝しています。

  

昨今の若者にとって音楽の中心はYouTubeのカサついた低音質だったり、配信サービスの圧縮音だったりする訳ですが、聴き分ける耳の良さを持った若者が低音質で聴き、加齢による劣化で耳が悪くなった中高年がハイレゾを聴くとは、なんとも切ないですね。〔了〕