モノラル化の進む音楽

アルバム「AKIRA REMIX」(2024年)のCDジャケット画像

映画「AKIRA」(1988年)の印象的な楽曲をリミックスしたアルバム「AKIRA REMIX」が2024年8月21日に発売されました。原作者・大友克洋氏が自ら全面プロデュースとあってクオリティは高いのですが、「音場の狭さ」が遂にここ迄来たかと愕然としました。


「音場」(Sound Field)とは音の広がる空間を指す言葉で、オーディオ的には再生音で其れを再現する事を指し、音場が広い=聴覚上ステレオ感の広がりが大きい事を指します。

映画「AKIRA」の楽曲は芸能山城組が担当していますが、芸能山城組は当時から音場感に優れた(音場感の広い)ダミーヘッドマイクを駆使した楽曲が特徴で、AKIRAの楽曲も正にそうでした。

 

反面、今回リリースされた「AKIRA REMIX」は音場が非常に狭いミックスダウン(楽曲の仕上げ)になっています。

これは昨今、楽曲を聴く環境がスマホのスピーカーやイヤホンで聴かれる(更にスピーカーであっても机上に置かれ至近で聴かれる)事から敢えてステレオ感を抑える(音をモノラル寄りにする)事で聴き取りやすさを担保する傾向がある為です。

加えてエレクトロニック系の楽曲では、音の密度を高めて全体的にコンプレッションを強調し、音の密度を上げる為、結果として音場が狭く感じられる傾向にあります。

つまり、音場の広さ=ステレオ化を追い求めていた音楽が、ここに来て音場の狭さ=モノラル化へと逆向する流れになっていると言えます。

 

今回の「AKIRA MIX」(2024年)と、当時のサントラ盤・芸能山城組「Symphonic Suite AKIRA」(1988年)を比較すると、あれだけ空間表現豊かただった楽曲たちが極端に狭いフロアに閉じ込められた様な窮屈さを感じます。イヤホンで聴く分には其れでも良いのかも知れませんがリビングのオーディオで聴くと残念な気持ちになりました(=要は、オーディオ的に音のクオリティがあまり高くない。芸能山城組はそこを追求していたのに・・・)。

 

大友克洋氏は芸能山城組のアルバム「輪廻交響楽」(1986年)に感銘を受けAKIRAの楽曲を依頼したそうですが、芸能山城組の特徴の1つである音場の再現がバッサリと失われた「AKIRA REMIX」はリミックスのクオリティが高いが故に余計に残念でした。[了]


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