君がみ胸に 抱かれて聞くは(by 蘇州夜曲)
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君がみ胸に 抱かれて聞くは
夢の船唄 鳥の唄
水の蘇州の 花散る春を
惜しむか柳が すすり泣く
作詞・西條八十、作曲・服部良一の名曲「蘇州夜曲」は1940年、李香蘭の主演映画「支那の夜」劇中歌として生まれます。
水の都と呼ばれる中国・蘇州は、美しい水郷風景と整った街並みが魅力。大都市・上海に隣接し、古くから盛んな繊維産業で経済的安定を築いてきました。
そんな蘇州を舞台にした蘇州夜曲は、正に蘇州の美しい情景と併せどこか哀愁を感じる歌詞に、繊細なメロディ、そして李香蘭の歌声が絶妙なバランスで構成された、昭和を代表する名曲のひとつ。
当時は正に大日本帝国が領土を最大化した時期であり、中でも中国大陸への介入を最も進めた時期とも符号します。
日本人の中国(当時は支那)に対する想いは、今日に至るまで複雑を極めます。歴史的には古くは日本に漢字を齎した先進国としての尊敬であり大国としての畏敬の念がある一方、近代では侵略先として蔑みの扱いに変わり、そして昨今では強権的な超大国としての一面に警戒感を強めています。
反面、日本には無い広大な大陸で紡ぎ上げられた独自の文化や美しい光景に「憧れ」や同じアジア人として漢字文化の国として「シンパシー」を感じる日本人もまた多く存在するのも事実。
そんな憎愛が入り混じる複雑な感情では無いでしょうか。
中国のネット上に6日、「なぜ日本人はこれほど中国文化を愛するのか」と題する文章が掲載された。写真は上海で開かれた日中書家展の王羲之の書。
冒頭に紹介した映画「支那の夜」に主演し「蘇州夜曲」を歌った李香蘭は、先日の記事で紹介したイサム・ノグチ氏と一時期は夫婦関係にあったそうですね。
そんなエピソードを聞いたせいか、札幌市内に点在するイサム・ノグチ氏の作品を目にする度に「蘇州夜曲」が頭をリフレインします。〔了〕