まろやかな音色、往年のヤマハスピーカー

YAMAHA NS-2 (1995).

最近使っているスピーカーのお話し。我が家では室内数カ所にスピーカーを配置しており、たまに気分に応じローテーション的に配置替えをしています。


音色が最も美しいのは、ヤマハ「NS-B330」。解像度の高さと音色の美しさから私にはこれ以上のスペックのスピーカーは全く以て不要と感じる逸品です。

一方、近年気に入ってリビングで使っていたのがコスパモンスターなヤマハ「NS-BP200」。こちらを現在はテレワーク書斎に移動し、メリハリのある音をニアフィールドで奏でて貰う役割を担って貰うことになりました。

そして、NS-BP220に代わってリビングに鎮座したのが冒頭の画像にある超マイナーなヤマハ「NS-2」でした。

 

多くの皆さんにとって「NS-2」なるスピーカーは全く馴染みが無いと考えますので、今回はそんなマイナーなスピーカーのご紹介です。

ヤマハ「NS-2」は、1995年に発売された音楽鑑賞用スピーカーです。価格は2本セットで30,000円、現在の貨幣価値に換算して31,752円・・・そう、30年ちかく経っても殆ど貨幣価値が変わっていない日本は本当に異常ですね・・・。

とまれ、1995年と云えば年明け早々に「阪神淡路大震災」が発生した他、テロ事件の「地下鉄サリン事件」が起きたことで「日本の安全神話が崩壊した」と盛んに言われた年でした。まだバブルを引きずっていた90年代前半との大きな転換点となった時期でもあります。

 

そんな1995年に誕生したNS-2の特徴は、端的に云ってそのシックな(悪く言えば陰気臭い)外観にあります。

ヤマハのスピーカーはシンプルで美しいデザインが特徴ですが、このNS-2は、これまでのヤマハスピーカーのデザイン系統から少し外れた、渋みの強い暗めな外観を持ちます。ヤマハは前年の1994年に「NS-5」なるスピーカーをリリースしますが、このNS-5とデザイン傾向が似た、モダンとクラシックの両方を兼ね備えた独特な立ち位置になります。

 

ウーハー部分のコーン紙は、暗く燻んだ何処となく和紙のような表情の質感を持った見慣れない面持ちです。ツイーターも濁ったウズラ卵のような色をしており、こちらもまた実に陰気臭い。スピーカー全体が放つ暗い雰囲気は、この配色に依るところが大きいと感じます。

 

デザインを担当したのは日本の最大手デザイン事務所「GKデザイン機構。GKデザイン機構は1952年にその前身となるデザイングループが結成され、日本の戦後復興をデザインの力で下支えした集団として広く知られています。

日本に住んでいたら、誰もが必ず目にしたことのある様々なプロダクトを担ってきたGKデザイン機構は、その設立当時からヤマハと密接な関係にあり、ピアノやオーディオ、オートバイ等、様々な傑作をリリースしています。

私もそうですが、ヤマハのファンが「ヤマハのデザインは他社と違う」と感じるその想い、GKデザイン機構による直接的/間接的な影響が大きなウェイトを占める訳ですね。

  

そんなGKデザイン機構がデザインした「NS-2」、散々悪態をついてきた訳ですが、よくよく見るとエンクロージャーのエッジ部分が前面に向かってラウンドしていたり、ウーハー部分の留めネジ類が化粧板で隠されている等、なかなか拘りの強いデザインであることが分かります。

なんだか英国のオーディオブランドが作ったような不思議な面構えのNS-2ですが、好き嫌いは大きく分かれる(そして9割以上の人にとっては好ましくない)デザインであるのは確かなようで、後継モデルも出ることなく終息している不人気モデルでした。

一見、暗い印象を持つNS-2ですが、明るいリビングにも馴染む、どこかレトロで落ち着いた雰囲気を私は好んでおります。

  

さて、肝心な音色について話をすると「地味」の一言に尽きます。とりわけ高音が伸びやかな訳でもなく、かといって低音の響きもあまり良くない。ボリュームをあげてもこぢんまりと鳴っているような、あまり音の広がりも解像感もメリハリもあまり無いスピーカーです。

そう言うと音が悪いような印象がありますが、これが夜中に静かに鳴らしている分には心地よい音色なのだから面白いもの。

 

聴き疲れのない、なろやかな音色。それがYAMAHA NS-2最大の特徴かも知れません。疲れた中高年の夜に、心地よいNS-2の音色をお供に乾杯しましょう。〔了〕