名前だけが残った、カールツァイス。
年末年始、部屋の奥から25年以上も昔の懐かしい本が出てきました。「ツァイス 激動の100年」なる本書は、1846年創業のカールツァイス社(ドイツ)の歴史について書かれたものです。
世界屈指の光学メーカーとして名を馳せたカールツァイスが第二次世界大戦のドイツ敗北によって東西両陣営に分割され、そしてドイツ再統一で統合を果たす迄の経緯を追ったノンフィクション歴史書。
本書の原題はドイツ語で「Nur der Name war geblieben」。直訳すると「名前だけが残った」となります。原著が書かれたのは1991年、訳書が1995年で、ドイツ再統一までが書かれているのですが、その後の現在に至るまでのカールツァイスを見ると、正に「名前だけが残った」状況。あたかも20年後を予言したかのようなタイトルが感慨深いです。
ご存知のようにカールツァイスは様々な提携メーカーに、そのブランド名の利用を認めるライセンス商売を得意としています。日本でも古くはヤシカや京セラ、近年ではソニーに富士フィルム、そしてコシナ等が挙げられます。
こうしたカメラ/レンズメーカーならまだしも、最近では中国のスマホメーカーvivoや、福岡のメガネ屋(ZEISS VISION CENTER)に至るまで、その提携先を拡大。
果ては米国シルバーアクセサリーブランド「クロムハーツ」にまでスキー用ゴーグルのレンズとしてブランドをライセンスしています。私もカールツァイスがゴーグルのバイザーを一枚一枚、ドイツで丁寧に作っていると信じる程にウブでは無いです。
カールツァイス側の言い分は「それがどこで造られようとも我々の厳しい基準をクリアした商品はカールツァイスだ」というのですから、際限なく提携先を増やして利鞘を稼ぐ商売に走っている感じです。
其れでも、この手法が破綻しないのは提携先のプロダクト&サービスが一様に高クオリティだからでしょう。とはいえカールツァイスの名を冠しただけで「そこまで強気の値付けをしてくるか」と感じるのが正直なところ。
もっとも、私のように値段についてケチケチ言うような層は相手にしていない商売なのでしょうがね。〔了〕