TTArtisan 35mm F0.95のボケの美しさ。
前回の記事に引き続き中華レンズ「TTArtisan 35mm F0.95」のお話し。前回の記事だけでは語り足りない「ボケ味」を中心にご紹介します。
(F0.95 , ISO100 , 1/160)
札幌の繁華街ススキノで一際目を引くビルの屋上にある観覧車。そのビルの地下にストリートピアノが設置されており、娘が演奏した際の写真(演奏曲はPhildelの美しいピアノ曲「Qi」)。
ご注目いただきたいのは、奥の電飾の光が美しい玉ボケとなっている他、ピアノに反射した光が、まるで印象派の画家が描いたようなタッチになっている点。とても趣きのあるボケ感だと思いませんか。
(F0.95 , ISO100 , 1/100)
右から2つ目の天井吊り下げライトにピントを合わせていますが、絞り開放での解像感も必要にして十分。遠ざかるボケ感も美しく、ライトの色のりも暖かみを感じる自然さです。
(F0.95 , ISO100 , 1/1600)
このレンズはカフェやレストランでの撮影が楽しいです。目の前の料理をそのまま写せる、最短撮影距離0.35mという短さのテーブルフォトに最適な仕様。
(F0.95 , ISO100 , 1/250)
玉ボケの形状は、それぞれ好みがあるでしょうから一概に言えませんが、私の感覚では美しい玉ボケです。
私は所謂「年輪ボケ」(玉ねぎボケ)と言われる、玉ボケの中にグルグルと渦巻き状の線が入る、非球面レンズに見られるボケが苦手なのですが、このレンズは球面レンズの為、そうした年輪ボケは生じず、美しい玉ボケを描いてくれます。
勿論、球面レンズ故に歪曲収差をはじめとした各種収差が出てしまう訳ですが、そこは玉ボケの美しさとトレードオフしたと考えねばなりません。
・・・そう、このレンズは良いところばかりではなく、悪い点も其れなりにあります。例えば、写りの面においては、決して解像度の高いレンズではありません。良く言って「並」と感じます。他にも前述の「歪曲収差」は、個人的には許容範囲ですが、正直かなり強く出ます。
(CC Photo by Yumi Abe.)そして・・・何より私が気になるのが「外観」。この柄は・・・そう、東ドイツ時代のカールツァイス・イエナに見られたゼブラ柄の意匠を白黒反転させた丸パクリな感じで、アクの強さと相まって少々苦手。
そうした幾つかの気になる点もあるものの、それを上回る楽しさと魅了のあるレンズだと感じています。
私はEOS Kiss Mに装着していますが、カメラ本体の小ささとレンズの小ささで取り回しのしやすさがとても良いです。
この日もトラベルコートのポッケにカメラを放り込んで街中をウロウロしましたが、この手軽さは、ちょうど10年前に好んで愛用していたNikon 1と18.5mm F1.8との組み合わせを思い出します。
(コンパクトで気に入っていたNikon V1 + 1NIKKOR 18.5mm F1.8の組み合わせ)
この「TTArtisan 35mm F0.95」を購入してからは、すっかりメイン機のフルサイズ機は部屋に置いたまま、TTArtisan 35mm F0.95を装着したEOS Kiss Mばかり持ち歩くようになる始末。手軽で気軽に撮影が楽しめる身軽さが、とても気に入りました。〔了〕