「夢カメラ」に見る、藤子・F・不二雄マンガの奥の深さ


藤子・F・不二雄氏はカメラ好きとして有名です。以前、川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムを訪れた際は、氏の愛機としてアサヒ・ペンタックス等が展示されていました。


藤子・F・不二雄氏は、言わずもがな「ドラえもん」や「オバQ」等の有名作品が沢山ありますが、なかでも私が好きなのは読み切りの「SF(少し不思議)シリーズ」。

冒頭の「異色短編集」は、雑誌読み切りのSFシリーズを1977〜1987年にかけて単行本化したもので、その5巻目「夢カメラ」(初版1982年)はカメラにまつわるエピソードが多めに収録された単行本です。

私が小学生だった当時に買って貰った初版本ですが、40年を経てた今読み返してみても興味深いエピソードなのは勿論、いまになって気づく発見などもあり、改めて藤子・F・不二雄マンガの奥の深さをしみじみ味合っています。

例えば未来からやってきた謎のカメラセールスマン↓


彼の名は「ヨドバ」。妙な名前ですが、どうやら「ヨドバ氏」(ヨドバシ)から来ているそうです。

 

「ミニチュア製造カメラ」(1981年)の一コマでは↓


このシーンでは画角28mm程の広角レンズで撮られたようなパースペクティブですが、次のコマでは一気に雰囲気が変わります。


こちらのシーンでは70mm程の画角でしょうか。テーブルの大きさや人物の距離感が随分と違うのが分かりますね。

また、二人の会話にも注目してみると、下のコマは互いにより心を開いた本音の会話であり、絵の距離感と内容がリンクしているのが分かります。こうしたテクニカルな手法は、その裏にカメラへの深い造詣があってこそ。

 

他にも「値ぶみカメラ」(1981年)に登場する下記シーン↓


このシルエット、特徴的な四隅の突起はちょうどこの作品が描かれた頃にリリースされたフラグシップ機「PENTAX LX」(1980年)と思われます。

藤子・F・不二雄マンガは荒唐無稽な話しであっても、何気ない街並みであったり、日常のアイテムであったりの細部が描き込まれることで、一気にリアリティさが増す特徴があります。


リアリティさの例では上記「同録スチール」(1981年)に出てきた腕時計もそう。これ、明らかにオリエントが1970年代に出していたタイプですよね。

  

勿論、40年前の子供の頃に読んでいた時には気づかなかった訳ですが、改めて読むと色々な発見があって面白い。

藤子・F・不二雄のSF短編は電子書籍で買い直していたものの、やはり紙の本で読んでこそ当時の味わいがありますね。また買い揃えるかな。[了]