開かずのエレベーター


私の住む札幌市の繁華街「ススキノ」には以前、有名な「開かずのエレベーター」がありました。私がそのオカルトめいた都市伝説&心霊話を聞いたのは、いまから35年近く前のことです。

冒頭の画像は「開かずのエレベーター」が確認できる2020年当時のもの。


右端にある奥のエレベーターは常に上に留めおかれています(私がこの目で確認した35年程前には既にこの位置で停止)。

同施設は遡ること1974年「札幌松坂屋」なるデパートとして建てられます。その後、1979年に「ヨークマツザカヤ」に改称、1994年に「ロビンソン札幌」に改称、2009年に「ススキノラフィラ」に改称され、2020年に閉店、2021年までに建物は解体され現存しません(2024年に「ココノススキノ」として全く新しいビルが開業)。

最初の噂が立った「ヨークマツザカヤ」時代から、続く「ロビンソン札幌」時代においては4基あるエレベーターのうち奥の1基だけが閉ざされており、2009年の「ススキノラフィラ」に改装時に「開かずのエレベーター」前はATMを設置して物理的に塞いでしまう徹底ぶりでした。

 

「開かずのエレベーター」にまつわる都市伝説&怪談話しは様々あります。「1980年代に火災事故で死者が出た」、「1990年代初めに飛び降り自●があった」等でいずれも其れ等を原因とする心霊現象により1台のエレベーターが閉鎖されたと云うもので、どれも噂話の域を出ないものばかり。

当時の私が噂話を聞いて「開かずのエレベーター」を野次馬しに行った際にも、エビデンスの無い似たような噂話がベースでしたが当時聞いた話とは時代設定が異なるので、柱となるストーリーだけが都市伝説として残っていて、年代などのディテールが時代によって上書きされているのかも知れません。


私としては、こうした適当な事故や自●の噂話をベースとするよりも、むしろ時代を遡って「薄野遊郭(すすきのゆうかく)」の話に絡めた方が好みなのですが、そうした噂話は残念ながら耳にしません。

「薄野遊郭」は北海道開拓の明治初期に作られましたが、件の建物と場所が合致します↓


上記地図の赤旗が立つ「ココノススキノ」が件の旧建物があった場所。地図の赤線部分のように当該区域は他の区域の並び(=青線部分)から少し南に奥まったところから始まっています。これは当時の遊郭として定めた場所を囲う目的で高さ 4 尺(約1.2m)の土塁が積まれた跡でした。

もしもこの地に悲しいストーリーをアドオンしたいのならば、いっそ明治時代まで遡ってストーリーを練った方がソレっぽいと私は思ったのですが、其れだと流行らないようで残念です。

(薄野遊郭は官許・官製の遊郭であった事からも悲惨な歴史的背景はあまり伝え聞かないですが)


都市伝説にありがちな、現在と”地続き”感のある1980〜90年代の方が「先輩から聞いたんだけど」的なリアリティ感があるのかも知れませんね。例えそれが「ここで誰かが自●したらしい」的な根拠の弱い話であったとしても。

尚、この地をわかる範囲で遡ってみても噂話以上のものは出て来ず、陰惨な事件・事故があったような場所では無さそうです。

 

・・・ただ、この地では2021年に死者を出す悲しい事故が起きています。「開かずのエレベーター」を持つ同ビルを解体工事していた際、若い作業員1人が死亡する事故が発生したのです。


いわくつきの場所だった故に「開かずのエレベーター」の都市伝説と絡めて「やはり呪われているのでは・・・」と都市伝説&噂話がネット上で再燃していました。

  

COCONO SUSUKINO.

解体工事の悲しい事故を経て、新しく建設された「ココノススキノ」。

先日、私もようやく行く機会がありましたが、明るく開放的でモダンなビルでした。

ちょうど件エレベーター付近から撮影しましたが語りつがれたような仄暗い雰囲気は全く感じません。そう遠く無いうちに、この都市伝説も忘れ去られるのでしょうね。

 

・・・このまま何も起きなければ。[了]