ISO感度固定でマニュアル撮影をシンプル化

PowerShot G1X.
当ブログでも幾度となしに2012年製の古いコンパクトデジカメ「PowerShot G1X」への愛着を記載してきましたが、本日もやっぱり”G1X愛”を語る内容です(苦笑)。

  
進化著しいデジタルカメラ業界ですが、PowerShit G1Xは現在の水準においても、その美しい描画にアドバンテージがあると共に、使い熟しに奥の深いカメラであり、とりわけ真価を発揮するのは「Mモード」(=マニュアル撮影)にあります。
 
具体的には「Mモード」にし、更には「ISO感度固定」設定で撮る行為が、”追い込み”度合いが深く、チャレンジングであり、大変に興味深いです。
 
Accomplished.
ときに、話は少し変わりますが、カメラの撮影方法において、フィルム時代とデジタル時代で大きく進化した点は「自由に設定できるISO感度」にあると考えています。なぜなら、フィルムカメラでは、まず最初にどのフィルムをカメラに装填するか、が撮れる写真に大きな影響を与える分かれ道となるためです。
 
例えば、フィルム時代に晴れた行楽地での撮影だったのでISO100のフィルムを装填して撮影をはじめたものの、日中に撮りきることができず、夕食時に立ち寄った雰囲気の良い薄暗い店内で撮影しようにもISO100では絞りを目一杯、開放にしてもシャッター速度を1/15まで落とさないと露出があわずに、結果として手ブレの写真ばかりでマトモに写っていない・・・とか、フィルムカメラを扱う方なら、そうした経験された事あるかと考えます。
  
これに対し、デジタルカメラではISO感度は常に撮影者の意図もしくはカメラ側が(最適と考える露出に)いつでも変更できます。これはフィルム時代では考えられなかった大きなアドバンテージであり、フィルム時代で例えるなら撮影シーンごとに特性の異なるフィルムに装填し直すことと同義になります。
 
こうしたISO感度を常に自由に調整できるデジタルカメラですが、逆に此れがアダとなって、撮影者の意図を表現しようとした際に撮影者にとって、より複雑な思考を要求する事に繋がっている、と懸念しております。
 
具体的には、フィルム時代ではフィルムの持つISO感度という「固定された基準点」からカメラ側が受ける光の量を「シャッター速度」または「絞り」あるいは、その両方を組み合わせる、という1〜2要素の設定のみで露出を考えることができました。
 
例えばボケ量を決める「絞り」は比較的決めやすく「ここはf2.8のボケ量で写したい」と考えるシーンであれば、あとは調整するのは「シャッター速度」の1つのみに気を配れば良かった訳です。
 
対して、デジタルカメラでは「ISO感度」「シャッター速度」「絞り」の3要素を駆使する必要があります。「プログラムオート」(AE=Auto Exposure:自動露出、Pモード。これ自体はフィルムカメラでも1960年代から存在します)で撮影するとカメラが考える最適な露出(=最も無難に万人からキレイに見えるであろう露出)に自動調整してくれますが、デジタルカメラでは、ここから撮影者が自分の意図する描画にするために、この3つのパラメータ要素の関係性を考慮しつつ調整する必要があり、これは即ち所謂カメラにおける「段数」の理解と、その使い熟しが求められる事を意味し、正直なかなか難儀になってきます。
 
これを、フィルム時代のように「ISO感度」をFIXすることで(場合によっては「絞り」または「シャッター速度」のどちらかをFIXしておくことで)、調整パラメータを1〜2要素にシンプル化できます。私はPowerShot G1Xで撮影する際は、敢えて「ISO感度を固定化(=日中〜夕暮れならISO100縛り)」して撮影を愉しんでいます。
 

Hydrangea.
(ISO100、f5.8、1/50 にてマニュアル撮影)


 
例えば上記写真、PowerShot G1Xからの”撮って出し”をそのまま掲載していますが、夕暮れの公園で池のほとりに咲く紫陽花に差し込む夕陽を美しく描画してくれています。これをプログラムオート(AE)の露出で撮ろうとしたら、こんなにアンダーな暗い描画にはならず、誰が見てもハッキリと写る明るい写真に仕上がってしまいますよね。
 
それらを抑制し、私が見たシーンをそのまま再現したいのなら、やはりMモードでのマニュアル撮影に他なりません。このときはカメラ側が適正と判断する露出より約2段階分アンダーになっていましたが(G1Xには搭載する露出計の基準値との段数差が「-2」などのように表示されるます)、これこそが目の前の光景と合致する”正しい露出”であったと考えています。
  
Triangle shaped roof.
(ISO100、f4.5、1/500 にてマニュアル撮影)


上記写真も、同じくマニュアル撮影時に「ISO100縛り」を課すことで、むしろ頭の中での露出補正を2要素のみでシンプル化して考えることが出来、肉眼で見ている風景をうまく再現することが出来ました。信号機や建物は沈み始めた夕陽に照らされていますが、空はまだ青く澄んでいる情景でした。
 
 
適正にそのシーンで必要とされるISO感度に自動切替してくれるのは、デジタルカメラの大きなアドバンテージの1つですが、敢えてその機能をキャンセル化することで、写真撮影の最大要素である「光の量」についてシンプルに考えを巡らせることができるようになりますので、ISO感度を、敢えてFIXして撮影するのも面白いです。
 
その際、「絞り」や「シャッター速度」を直感的に変更できる、一眼レフカメラのような操作性の良さを継承しているにPowerShot G1Xが活きて来るという訳であります。〔了〕