鰯引く季節、アンプに想う性能差
雑誌「STEREO」誌2004年3月号は一部のオーディオファンの間で語りぐさとなっています。同誌の記事にアナログアンプ2台とデジタルアンプ6台の合計8台をブラインドテストで比較する企画がありました。
そのテスト結果が印象的で、被験者4人の評価は・・・3,000,000円の超高級アナログアンプが最下位となり、9,800円のデジタルアンプに負ける結果となります(!)。
また、音質と価格に相関関係は見られなかった(高い機種だからといって音質評価が良い訳ではなかった)点も実に興味深く、そうした逸話が20年近く経った今でも語り継がれているのでしょうね。
先日、ヨドバシカメラ札幌の視聴コーナーで購入検討をしてたアンプを比較検討してみました。アナログアンプ「A-S301」(定価44,000円)又は「A-S501」(定価66,000円)のどちらが良いか聴き比べた訳ですが、結果としては見事なくらいに音質の差が分からず(苦笑)、冒頭の逸話を思い出しました(騒がしい店内での視聴には賛否あるでしょうが)。
昨今のアンプは性能的に必要十分であり、決め手となるような性能差は殆ど体感できないのかも知れませんね(かなり昔、中古のPioneer SA-80を使っていたのですが、昨今のアンプと比較すると音がモワモワと解像感が低かったですが、最近のアンプはどれも素晴らしい性能です)。そうなると、あとは好みの外観や質感、使い勝手そして予算という評価軸で選べば良いのでしょう。
書斎で愛用しているスピーカーはYAMAHA製「NS-BP200」という2010年にリリースの安価なブックシェルフ型2wayスピーカー(インピーダンス6Ω)です。このNS-BP200に組み合わせているアンプは、これまたリーズナブルな中華デジタルアンプMUSE AUDIO製M21 EX2という25W×2ch(4Ω)なモノ。発売当時4,180円也(2011年)。
アンプ(4Ω)とスピーカーのインピーダンス(6Ω)の差から、最大電力出力が若干低くなるものの誤差範囲。これまで出力にも音質にも不満を感じたことはありません(むしろデジタルアンプの特性と解像感の良さに定評あるスピーカーとの組み合わせはとても好ましいです)。
・・・とは言え、インテリア要素を考えると、伝統的なヤマハのシンプル極まるアンプに憧れもあり「A-S301」(定価44,000円)と「A-S501」(定価66,000円)を比較検討した訳です。
事前にネットのレビューを見ると、下位機種A-S301は音が曇って解像感に乏しく、中位機種A-S501以上で無いとダメだ、という意見が散見されます。しかし両機仕様を比較しても、そんな印象はまるでなく、ホントに出力差以外これと言った違いが見つけられません(実際、両機はマニュアルも共通な程ですからね)。
ならば出力をそれ程必要としない私には2万円の価格差によって得られるメリットは無く、ルックスも同じ事から下位機種のA-S301で十分なのかな、と考えました。
前述のように4,180円の中華アンプを10年使う身ですから、今回買うアンプも軽く20年は使う訳ですが、20年後の自分を想像すると60代後半。となると今回購入のアンプは人生で最後だと思うと中位機種のA-S501、・・・いやいや、いっそ上位機種の「A-S801」(定価110,000円)を買ったって良いじゃないか、いやいやいや、そうなるとスピーカーも其れなりに合わせて、、、と感覚がおかしくなってきます。
悶々と悩んでいるとヨドバシカメラ店員さんから「いずれも在庫切れ、入荷も未定、メーカー欠品状態が長らく続いています」との残念なお知らせ。
いわく、世界的な半導体不足に加え、新型コロナの影響によるステイホームでのホームオーディオ需要の急速な高まり、更にはヤマハ製品の半導体製造を担っている旭化成マイクロシステムの工場火災により、コア事業である電子楽器製造にまで影響が出ているとのこと。
更にきな臭い事に、相次ぐ半導体工場の火災事故には、工作員の暗躍も囁かれる始末。
これでは当面、ヨドバシカメラに在庫が入ってくることは期待できなさそうです。実際、ネット上では在庫を持つショップがこの品薄を機敏に察知し「A-S301」や「A-S501」といった人気のエントリーモデルの値上がりが続いています。
見事に値上がりしているのが分かりますね。25,000円付近で売っていた頃を目にしているだけに、いまさら34,000円を出して買うのも躊躇われます。
そんな訳で、リビングのプリメインアンプをYAMAHA製の趣きあるクラシカルな外観のアンプに買い替える計画は一旦保留に。
・・・そもそもリビングでスピーカーを鳴らすと、音楽趣味の合わない嫁さん・長女・次女から総スカンを喰らうので鳴らす機会もあまり無いのが正直なところですが〔了〕