正しい生き方と坂本龍一という憂鬱

3.11で福島原発の事故を伝える読売新聞の号外

前回の記事で、私が2008年頃に有事に備えて「散弾銃」と「ダーチャ(菜園付きセカンドハウス)」の購入を検討していたものの(東日本大震災などの有事を経て)無意味と感じた件をご紹介しました。


なんともバカげた話ですが、人というのは考えを巡らせる余りに愚かな方向に思考が流れていく事があるのだ(それを後で振り返って赤面しながら自分の愚かさを恥じるプロセスこそ意味があるのだ)と感じる昨今です。

 

ランドローバー:LAND ROVER.

熟考を重ねた挙句にバカげた判断をしたエピソードで私がいつも思い出すのは、坂本龍一氏。9.11テロをNYで目にした坂本龍一氏が、瓦礫に埋もれた道路を見て「ランドローバーを買わなきゃ」と思い立って購入した、という面白ストーリー(某車雑誌でランドローバーを選択した理由とその頼もしさを嬉々として語っていました)。

そもそも瓦礫の山をパンクせずにゴムタイヤで越える事が何処まで出来るのか、という初歩的な疑問を無視したとしても(ランフラットタイヤ等を用いてパンクせずにある程度の距離を走れたとしても)瓦礫で立ち往生した車たちをランドローバーの巨体でどう避けて走るのか疑問ですし、もし本気で瓦礫の山となった道路を越えて脱出を試みるなら小型4WDのジムニーであったり、オフロードバイクであったりが現実的な解である事は明らかです。

 

坂本龍一氏はリベラルな立ち位置から政治的な発言も多いものの、その多くが実にツッコミどころ多いのも憎めないところ。とはいえ前述のように私が検討だけで終わった「散弾銃の購入」とは違い、さすが決断力とマネーパワーに長けた坂本龍一氏は実行力が違います。

  

iPodとBOSEのヘッドホンの組み合わせで、往年のYMOを聴く

とは言え、坂本龍一氏の音楽についてはYMO時代からのファンのひとりとして、氏が何か音楽以外で発言する度に憂鬱になるのが残念でなりません。

イルカ保護然り、地雷ゼロ然り、ロハスな生活然り、そして脱原発然り・・・。高校生の頃は学生運動に参加していたというから生粋のアクティビストなのでしょうがノイズが多いのは否めません。 

正しい(と本人が強く信じる)生き方と、現実との間には深くて暗い川が存在するのだ、とつくづく感じる昨今です。〔了〕

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