これが書店の生きる道 〜 リニューアルした「ヒシガタ文庫」
札幌市東区にあるヒシガタ文庫に出来たカフェ「喫茶ひしがた」に行ってきました。
元々、このカフェは「ダイヤ書房」という札幌で50年以上続く書店に源流を持ちます。確か80年代だったか90年代初頭だったか記憶が曖昧ですが、"郊外型”と呼ばれる店舗を札幌市内で最初に展開したのは同社だったと記憶ていますし。
その後、2000年代頃にはTSUTAYAのFC店となって本屋+CD/DVDレンタルの業態が続きますが、その郊外店舗も徐々に閉店となり遂に2008年には本店のみに。
日本における電子書籍”元年”は2010年と言われていますが(因みにKindle日本上陸は2012年)、ちょうどその頃、私の住む地域でも書店が次々と姿を消していったものです。
本店のみとなったダイヤ書房は2015年5月に「本屋の中に本屋をつくる」試みとして「ヒシガタ文庫」を立ち上げます。
当時は本店の1階が書籍コーナー、2階がTSUTAYAのレンタルコーナーだったのですが、書籍コーナーの1/4程を大胆に改装し、選別された本や雑貨などを扱うセレクトショップ的な機能を持たせた「ヒシガタ文庫」として全く雰囲気の違うコーナーを儲けます。
当時、いわゆる「セレクト書店」と呼ばれるオーナーがセンスで選んだ書籍が特徴の店舗であったり、ラウンジのような落ち着いた空間とオシャレな雑貨などを豊富に扱う(台湾「誠品生活」を真似た)「蔦屋書店」系の台頭など、書店の新しい方向性が注目を集めていた時期でした。
「ヒシガタ文庫」は、良い意味で”こじんまり”とした”オシャレなコーナー”という雰囲気でした。
そんなヒシガタ文庫誕生から7年を経て、今回のリニューアル(2022年9月オープン)では書籍コーナーをさらに削って全28席の開放的なカフェコーナー「喫茶ひしがた」に改装しています。
「喫茶ひしがた」ではコーヒーやハーブティー等ドリンクの他、ホットドックやバタートースト、クロックムッシュ等の軽食の他、クラフトビール等も提供されるというのですから面白い試みですね。
この日、私たちがいただいたのはゴルゴンゾーラのクロックムッシュ。独特の風味がとても美味しく、各メニューも本格的なカフェ仕様となっていました。近所にあったら毎週のように通いたい美味しさでした。
さて、一般的に書店の営業利益率は1〜2%程度と言われており、この低さはイオン等にも見られる”小売業”共通の課題と言われています。
一方、飲食店全体の営業利益率は8%程度、人気のカフェ店等で10%前後。客単価で見ると書店が1,300円程度、カフェが1,100円程度。
仮に書店で1,300円の購入で利益2%計算で26円、カフェで1,100円の飲食に対して利益8%計算で88円。集客力で言えば未だ書店のほうが間口が広いでしょうから、本を買いに来た客がついでにカフェコーナーに立ち寄るケースも考慮すると、なるほど、本屋にカフェを併設するのは合理的と考えます。
「ヒシガタ文庫」「喫茶ひしがた」共に名前の由来は、ダイヤ書房の"ダイヤ(菱形)"から来ているのだとか。
ダイヤ書房が札幌において老舗として長年に渡り存続してきたのは、時代に合わせた柔軟な"変わり身"にあるのかも知れませんね。10年後、20年後、同店がどういう展開をしているのか楽しみです。〔了〕