不慣れな距離感、135mm

Canon FD135mm F3.5 S.C. (I) (1973)

FD 135mm f3.5 S.C.(I)は、キヤノンが1973年に発売したFDマウントの単焦点望遠レンズです。


「S.C.」とは「スペクトラ・コーティング」の略で、色調を整える為の多層膜コーティングを行なっている事を意味します。

気になるのは続く「(I)」という表記。いわゆる「I型」と呼ばれるものですが、わざわざI型と表記するという事はII型があるのかと調べて見ると、同じFD135mmだけで3種類、NewFDも含めると4種類、さらにf3.5の他にf2.0、f2.5、f2.8もあって、どんだけ135mmが好きなんだよ、と言う状態。

  

Canon FD135mm F3.5 S.C. (I) (1973)

正直、昨今の感覚で言えば135mmはマイナーな焦点距離。なぜこんなにも数多く存在するのか疑問に思っていたのですが、フィルムカメラの時代には、135mmという焦点距離が人気のボリュームゾーンのひとつだったようですね。

当時を代表する135mmと言えば、「Carl Zeiss Jena Sonnar 135mm f3.5」というM42マウントの銘玉がありますが、各社様々な135mmを競ってリリースしていたようです。

今となってはキヤノンも現行モデルでは「EF135mm F2L USM」の1本しか出ておらず、しかも1996年のリリースから約25年もモデルチェンジしていません。理由は様々あるのでしょうが、昨今では70-200mmあたりの高性能な望遠ズームレンズが一般的になった為、135mmというちょうどその中間にあたる焦点距離を敢えて単焦点で持つ理由が薄いものと考えます。

 

Canon FD135mm F3.5 S.C. (I) (1973)

さて、そんな不慣れな焦点距離のFD135mm f3.5 S.C.(I)を、EOS Rにマウントアダプターを介して装着し、撮り遊んでみました。

 

Canon FD135mm F3.5 S.C. (I) + EOS Rでの作例その1

(f3.5 , 1/80 , ISO2000)

オートフォーカスの恩恵に慣れきった体には、ピント合わせが実に難儀に感じます。

EOS Rはオールドレンズに不向きなカメラボディと言われますが、それはカメラボディ内に手ブレ補正が無いためで、他にもフォーカスガイド機能が電子接点の無いオールドレンズ用マウントアダプターでは使えません。

電子接点付きのマウントアダプターを使えば良いのでしょうが、FDマウントとEOS RのRFマウントを変換するマウントアダプターには電子接点付きがありません(少なくとも私は知りません)。

FDマウントの変換で、電子接点付きのマウントアダプターとしてはEFマウント用のアダプターがありますが、例によってフランジバックを調整するための補正レンズが入っているのでパスします。


ただ、フォーカス拡大表示機能はあるので、それを活用して細かい合焦は確認できるので、手ブレさえ注意すれば何とかなります。

 

Canon FD135mm F3.5 S.C. (I) + EOS Rでの作例その2 

(f3.5 , 1/80 , ISO500)

注目いただきたいのは右側の玉ボケ。昨今の非球面レンズにありがちなグルグルと玉ねぎのようなボケになる「年輪ボケ」がありません。非球面レンズが当たり前となった昨今では、これが逆に目新しく感じてしまうのだから不思議な感覚です。

そうなるとオールドレンズでは、玉ボケの美しさに注目が集まります。FD 135mm f3.5 S.C.(I)の絞り羽根は8枚あり、ボケも相応に美しく表現できます。

この写真は絞り開放で撮っている為、いわゆる口径食と呼ばれる現象により、隅の方にある玉ボケがレモンのような形状になっていますが、概ね標準的な美しさの水準を保っていると考えます。

 

Canon FD135mm F3.5 S.C. (I) + EOS Rでの作例その3

(f3.5 , 1/60 , ISO640)

続く作例は、飲食店の店内を外からウィンドウ越しに撮影したものです。f3.5の絞り値でウィンドウに大きく書かれた店名が程よく前ボケしてくれていますね。天井からブラ下がる電球も破綻せずに普通に撮れています。

 

Canon FD135mm F3.5 S.C. (I) + EOS Rでの作例その4

(F3.5 , 1/80 , ISO1250)

若干、ピントが甘い感もありますが、右の階段手すり部分など細かい網目もシャープに描画してくれています。

 

なかなか慣れない焦点距離の135mmでしたが、それだけに新鮮味も感じられ楽しく撮影ができました。

カメラボディ内の手ブレ補正機能が無いEOS Rですが、開放f3.5の明るさがあれば何とかなりますし、f3.5開放で撮影してもシッカリ描画してくれるFD135mm f3.5 S.C.(I)は「使える」レンズと感じました。〔了〕

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