見過ごせない、マウントアダプター補正レンズの影響
オールドレンズを現在のデジカメで使おうとした際に、マウントアダプターの一部にはフランジバック(Flange Focal Length:レンズマウント面から映像素子までの距離)の違いを補う為に、マウントアダプター内に補正レンズが入っているものがあります。
具体的には、キヤノンの古いFDレンズを、現在の一眼レフカメラEOSに装着しようとする際に用いるマウントアダプターに見られます。
・・・結論から言うと、マウントアダプター内の補正レンズは「論外」というレベルに影響度が大きいことが分かります。
補正レンズにより、装着するレンズの持つ特性を大きく歪め性能を低下させます。また、補正レンズの影響で画角も約1.32倍になってしまいました(このあたりマウントアダプター仕様では、レンズ本来の画角が使えるように補正レンズが作用してくれる事になっていたのですが、実測では約1.32倍の画角になっている始末・・・)。
こうした点は、これまで体感的には理解できていたのですが、改めて検証してみると想像以上に補正レンズの悪影響があることが分かったので備忘録として記事にしました。
用いたマウントアダプターは2012年にヨドバシカメラで8,400円で購入した中国Kipon社製「FD-EOSマウントアダプター」。Kipon社はマウントアダプターでは、そこそこメジャーな存在なので、如何わしいアダプターを使っている訳では無いのかな、と考えます。
検証に用いたカメラボディはミラーレス機「EOS R」。冒頭の写真にあるように一旦、EFマウントに変換するアダプターを介してKipon社製「FD-EOSマウントアダプター」を装着し、一眼レフカメラのEFマウント機で撮影した時と同じような状態にします。
では、実際の撮影画像で検証していきましょう。
上記は、FL50mm f1.4 IIの絞り開放で撮影したもの。滲みがとても出ています。これを味と捉えるかは別ですが、この滲みはレンズの特性によるものでは無く、マウントアダプター内の補正レンズによるもの。解像感も大きく低下しています。
1段絞ってf2.0に設定。滲みはかなり解消されましたが、まだ薄っすらとモヤが掛かった感があります。あわせて解像感も鈍く、ピントが合っているのか分かり難いです。
更に絞ってf2.8に設定。滲みはともかく、周辺減光が気になりはじめます。解像感のなさは相変わらず。
次にf4.0まで絞ってみます。周辺減光がはっきり見えてきます。解像感のなさは相変わらず。FL50mmって、こんなレンズだったっけ?と思いたくなる感じです。
更にf5.6まで絞ります。なんだかレンズ中央部分に黒い斑点のような影が出てきます。f4.0とf5.6で比較すると、中央にある「Canon」ロゴの真ん中の「n」あたりが黒くなっています。これは一体・・・
そしてf8.0まで絞ると、完全に中央に黒いシミのような斑点のような影がしっかり出てきます。これでは実用になりません。
f11に絞ると、中央にシミのような黒い斑点がクッキリ見えてきます。これはダメですね。補正レンズが悪さをしているようです。因みに解像感も低いまま。
最大絞りのf16。・・・f11と同様に全く酷い状態ですね。
次に、補正レンズの無いマウントアダプターを試します。
ミラーレス機のEOS Rはフランジバックが一眼レフカメラのEOSシリーズよりも短い関係から、FD/FDレンズを補正レンズ無しのアダプターで装着ができます。これにより、先ほどまでの補正レンズ有りの撮影と、ここからの補正レンズ無しの状態を比較することが出来ます。
絞り開放f1.4。先ほどの補正レンズ有りのマウントアダプターとは異なり、補正レンズ無しのRFマウント用アダプターを介して装着されたFL50mm f1.4 IIは、全く異なる描画をしてくれました。
コレだよ、コレ!本来のレンズ描画力は!!と改めて感じます。そもそもFL50mm f1.4 II(1968年)は、高解像力を持つレンズとして生まれたレンズで、続く後継FDレンズでの指標になったと言われるものですからね。
続いて絞りf2.0。
そして絞りf2.8。
絞りf4.0。程よくシャープな解像感とコントラストが良い感じですね。
絞りf5.6。
絞りf8.0。
絞りf11。
そして最後、絞りf16。
こうして見ていくと、FL50mm f1.4 IIは、絞りf4.0〜5.6くらいが、解像感やコントラストを含めて、最も私の好みに合致する感があります。
そんなf4.0であらためて補正レンズ有り/無しで比較してみました↓
あらゆる点において補正レンズは悪影響しか与えていないことが分かります。
補正レンズ付きのマウントアダプターを購入した当初は「これがオールドレンズの味か」と勘違いしていましたが、フィルムで撮った時よりも解像感が落ちることから「・・・なんか怪しいぞコレ・・・」と感じて、使わなくなっていましたが、改めて検証してみると酷いものですね。8,400円もしたのに。
そうした意味では、最新のミラーレス一眼カメラに、素通しのマウントアダプターを介して写し出す世界は、フィルム時代の解像度を大きく超えており、紛れもなくレンズが持つ真の実力を引き出すことができると考えます。
ピント合わせは難儀しますが、オールドレンズを用いて、じっくり撮るのは面白い遊びになってくれそうです。〔了〕