たくさんあるのに なにもない

江別蔦屋書店の店内その1

我が家から本棚が消えたのは、いつの事だったでしょうか。


早10年そこら紙の書籍から足を洗い、電子書籍に縛ったは良いものの、読みもしない”積読”はiPadのメモリーを消費する一方。なまじ物理的に“積み上がる”ことの無い電子書籍は、買ったことさえ忘れてしまうのが難点です。

先日、電子書籍で読んだ「この世界の片隅に」(こうの史代)、この作者の絵柄はザラついた印刷紙とインクの匂いを伴った方が味わい深いと考え、久しぶりに紙の本で買い直すことにしました。

 

江別蔦屋書店の店内その2

向かった先は冒頭の写真にもある隣町にある大きな書店「江別蔦屋書店」。漢字で記述するツタヤは、いわゆる意識高い系な造りのオシャレな店内が売りです。幾度となく訪れていたものの、コーヒーを飲んだり、雑貨を買うことはあっても書籍を買うことは無かった江別蔦屋書店でした。

 

江別蔦屋書店の店内その3

はじめてじっくり店内の書棚を見て驚いたのが「この本屋、探しにくい」という点。

書店員の経験ある身として言わせてもらうと、紀伊國屋書店やジュンク堂書店に見られるような秩序が全く感じられない。ただ、そこに本が存在するだけ。最近の書店は逆にこうした無秩序な並びが流行りなのかな?と思っても・・・いや、これは違う。棚に秩序が無いばかりか、担当者の思い入れや拘りもまるで透けて見えない・・・。

 

とはいえ、これほど物量のある書店なのだから映画にもなった「この世界の片隅に」(上・中・下)くらい在庫あるだろう、と店内をいくら探してもそれっぽいものが全く見当たらない。同じ作者の描く「夕凪の街 桜の国」もまるで見当たらない。諦めて店内在庫の検索機で調べるも、在庫なし。

あらためて店内の棚をじっと見つめると、目の高さより上に置かれた本は何も関係のない洋書が“飾り”として置かれているだけで、それが高い天井まで並んでいるだけ。売り物ではなく単なる飾りの本と気づく(買えるのかもしれないけど)。他にもよくよく見れば、並んでいる書籍の種類は少なく、売れ筋の新刊が繰り返し置かれているだけでした。

この本屋、たくさんあるのに なにもない。本を「ただの飾り」として本屋が扱うことに少なからず抵抗を感じてしまいます。

 

北菓楼・札幌本館の2階カフェコーナーにある本棚:KITAKARO Sapporo Honkan - Designed by architect ANDO Tadao.

同じように本を飾りとして扱っている店に、北菓楼・札幌本館の2階カフェコーナーがあります。大正時代に建てられた図書館を改装しカフェとした訳ですが、こちらには図書館としての出自にリスペクトを感じる佇まい。

この違いはどこにあるのか、なんとも不思議な気持ちです。〔了〕

書籍「美しい本屋さんの間取り」の表紙とAmazon.co.jpへの商品リンク