腐っても鯛、腐ってもLレンズ。


我が家には良く似た焦点距離を持つ広角レンズが2本あります。1本はAPS-C用として2014年にリリースされた「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」(APS-C専用のため焦点距離16〜29mm相当:写真右)、そしてもう1本は2003年にリリースされたLレンズ「EF17-40mm F4L USM」(写真左)です。


望遠端こそ差はあれど、広角端はとても近い焦点距離。価格は「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」が50,600円(税込)・実売39,000〜43,000円程(並行輸入品で35,000円弱)。他方「EF17-40mm F4L USM」はLレンズであるため、定価132,000円(税込)・実売110,000円(税込)程度。相応に高額ですが、2003年リリースという事もあり、程度の良い中古でも40,000〜50,000円(税込)程度と、両者はかなり似た価格帯に落ち着きます。

 

実際の写りの違いを直接比較することが、やや難儀なこの2本。と、言うのも、かたやAPS-C機用、こなたフルサイズ機用ということで、同じシーンで比較撮影しても、センサーサイズによる画質差もあって単純比較が色々とやり難い。

そんな時、レンズの持つ特性を大まかに把握する方法としてメーカーが公表する「MTF曲線」を参考にすると便利だったりします(MTF曲線についてはコチラのサイトの解説が分かりやすいです)。




まずは、グラフ右側の「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」。比較すると、とりわけ解像度の面などは10年の技術進歩から安価な入門用レンズであっても「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」の方が、Lレンズな「EF17-40mm F4L USM」と比較しても、レンズ特性的に良い傾向にある事が読み取れます(グラフ横軸の値が違うのは「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」がAPS-C専用レンズのため。そしてAPS-C機はレンズの美味しい部分である中心部だけ用いることができますので尚更メリットがあります)。

EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」はカメラ内でのデジタル補正が大前提となるレンズではありますが、広角端でも四隅の解像感も高く、周辺光量落ちも目立たず、加えて、手ブレ補正機能も内蔵されているのですから、静止画・動画の両面でとても重宝します。まさに最新テクノロジーが実現した現代的なレンズと言えますね。

  

他方、Lレンズである「EF17-40mm F4L USM」は、控えめに言って、好くも悪くも”伝統的”な範疇に留まるレンズです。中心部こそLレンズらしい解像感と立体感ですが、広角端では四隅が流れ、解像感も著しく乏しく、絞り開放F4.0で使うのは、やや躊躇われます。

つまり「EF17-40mm F4L USM」は、Lレンズの称号を持ちながらも、入門機用交換レンズである「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」に対し、総合的に見て苦しい立場に追い込まれている感は否めません(苦笑)。

 

Canon EOS M50(Kiss M) + EF17-40mm F4L USM.

とまれ、「EF17-40mm F4L USM」はとても魅力的なレンズと考えます。

フルサイズ機用の広角レンズとしてはワンランク上の「EF16-35mm F2.8L III USM」が存在しますが、こちらは250,000円前後(!)の価格帯で、なかなか手が出せません。こうして比較すると「EF17-40mm F4L USM」のコストパフォーマンスの良さが際立ちます。

そもそも超広角レンズって、あまり普段は使う機会も無いので、そこまで投資せず気軽に楽しめる方が良いと考えます。

 

DONQ bakery shop and cafe.

また、「EF17-40mm F4L USM」をAPS-C機に装着して「標準ズームレンズ」として活用するのも悪く無い選択肢です。APS-C機では(レンズの中心部を用いるので)同レンズの欠点である周辺部の画質低下を抑えられ、とても使い勝手の良いレンズに化けます。

実際、私も上記画像のようにEOS Kiss Mに装着し、換算27〜64mm(ボケ量はフルサイズ換算F5.6相当)の標準ズームレンズとしての活用に重きを置いています。

 

色々と難点も多い「EF17-40mm F4L USM」ですが、鏡筒を手にした際の質感は間違いなくLレンズたる高い満足感を得られますし、「腐っても鯛」ならぬ「腐ってもLレンズ」。手頃な価格で入手できるLレンズとして「EF17-40mm F4L USM」はオススメです。〔了〕