ドラゴン・タトゥーの女給(映画「ドラゴン・タトゥーの女」に出てきそうな店員さん)

たまに行く近所のカフェで朝食。
愛用のカメラEOS Rに、1960年代のオールドレンズFL50mm F1.4IIを装着。
浅い被写界深度と甘い描画が最近のキブンです。

そういえば。
この店には独特な雰囲気を放つ若い女給がいます。
ショーのランウェイを闊歩するモデルのような色白で細身の彼女。
先端鋭利な黒髪ショートボブに、アンダーリムのメガネを掛け、
丹念に描き込まれた濃いアイシャドウの奥に見える切長な目は、
客に媚びないクールな応対と相まって、まるで獲物を睨む蛇のよう。
雇用者が与えた制服さえも、その着こなしから違った雰囲気に感じられます。

きっと彼女はタバコを薫らせ古いレコード盤を聴いているに違いない。
きっと彼女の父親はフランス人に違いない。
きっと彼女はかつてパリに住んだことがあるに違いない。
パリ時代の彼女は銃所持免許を取得していたのではないか。
だとしたら、彼女が愛用した拳銃はワルサーPPK/Sあたりだろうか。
いや、パリに溶け込むブローニングM1910を嗜んでいたに違いない。
そして、彼女の背中には、
龍の刺青(ドラゴン・タトゥー)が彫られているに違いない。
・・・と、そんな妄想掻き立てる存在感を放つ彼女を、
密かに「ドラゴン・タトゥーの女給」と呼んでいたのであります。〔了〕
※補足情報:映画「ドラゴン・タトゥーの女」とは〜深遠なる謎と人間性
スティーグ・ラーソン原作の映画「ドラゴン・タトゥーの女」は、単なるミステリー作品に留まらず、人間の業や社会構造に鋭い視線を向けた作品として、観る者に深い思索を要求します。
物語は、ジャーナリストの男が、大富豪より40年前に失踪した少女の捜索を依頼されるところから始まる。男は卓越した能力を有する天才女性ハッカーと協働して、大富豪一族の秘匿された過去を掘り下げていく。
本作の特筆すべき点として、その複雑なストーリー構成が挙げられる。事件の真相解明が進むにつれ新たな謎が浮上し、その度に観客の予測を裏切り続ける。加えて登場人物各々の抱える過去や葛藤が、物語に多層的な奥行きを与える。
とりわけ、天才女性ハッカーは特異なキャラクター設定で観客の注目を集める。社会からの疎外と自己の尊厳の間で葛藤する彼女の姿は興味深い。
さらに、北欧の冷涼な景観が物語の独特な陰鬱さを纏った雰囲気を醸成する上で重要な役割を果たしている。雪に閉ざされた孤島や邸宅といった舞台設定は、物語の展開と緊密に連動し、観客を作品世界へと没入させる。
「ドラゴン・タトゥーの女」はミステリー映画としての完成度に加えて、人間存在の深淵や社会問題を照射する作品として高い芸術的価値を持つ。