Lo-Fiレンズ、7Artisans 50mm F1.1 (その2)
(前回の続き)前回は私の購入した中国・七工匠「7Artisans 50mm F1.1」の元ネタ的な存在である、ライカ社の「Noctilux 50mm f1.0」(ノクチルックス)との比較をしてみました。
実はこの「Noctilux 50mm」を模した中華レンズがもう1つ存在します。それが「TTArtisan 50mm F0.95」です。
私の持つ「7Artisans 50mm F1.1」と名前もよく似たこのレンズを知るには、まず前置きとして「7Artisans」と「TTArtisan」という2つのブランドの違いを理解するところから始めねばなりません。
前回の記事にもご紹介したように、七工匠こと「7Artisans」は、中国のカメラ愛好家7人が2015年夏に深圳で立ち上げたプロジェクトがスタートとなります。
七人の匠=それぞれレンズ光学に長けた者、デザインに長けた者、生産工程に長けた者などが集まって、自分達の理想とする趣味性の高いレンズの設計・開発を目指すプロジェクトです。
私の購入した「7Artisans 50mm F1.1」のように、クラシカルで安価なマニュアルレンズを特徴としています。
一方、よく似た名前の「TTArtisan」は2019年に同じく中国・深圳でスタートした新興ブランドです。中国名「銘匠光学」なる同ブランドは、深圳市铭匠光学科技有限公司という会社が展開しています。
この会社、なかなか謎に包まれているのですが、一説には先述の「7Artisans」のレンズ製造を請け負っていたという話がネット界隈では公然と語られています。しかしながら、そのニュースソースが見つけられず真相は不明。
「7Artisans」と「TTArtisan」は共に名前もよく似ているのですが、趣向は結構違っていたりします。「7Artisans」は、どちらかというと伝統的な設計でオールドレンズに近い味わいの描画を愉しむレンズと言えます。価格帯も1〜4万円程度と安価な割にビルドクオリティの高い趣きのあるレンズが特徴となっています。
他方、「TTArtisan」は、非球面レンズを積極的に採用する等、どちらかというと切れ味の鋭い現代的な趣きのレンズであることが分かります。価格帯も3〜8万円程度が中心で、7Artisansに比較すると若干、中心価格帯がアップする感じです。
ともによく似た中華レンズですが、それぞれ「Noctilux 50mm」をリスペクトしたと思われる標準レンズを出しているところが実に興味深いのです。
上記のように、同じくライカの「Noctilux 50mm」をリスペクトした商品でも、7ArtisansとTTArtisanでは、ターゲットとしているレンズが違うことが分かります。ここからもTTArtisanが、より現代的なレンズを志向している事が伺えます。
また、これは何度も強調しておきたいのですが、両者ともライカのフルコピーでは無く、オリジナルなNoctiluxへのリスペクト商品である点です。
レンズ世界における金字塔のような存在であるNoctiluxをリスペクトしつつ、自分たちなりの解釈やアプローチで作り上げていくのが彼ら中華レンズメーカーの面白いところであり、私が惹かれた点でした。
次回は、そんな「7Artisans 50mm F1.1」ですが、既にリリースから4年経過しており、ネット上での各種ユーザーレビューも落ち着いたところ。そんな世間での評判と、私が購入に至った経緯をご紹介します。〔つづく〕