オーディオ趣味は「分断化」でなく「多様化」

JBL 4312M-II.

昨今、一部の愛好家から「オーディオ趣味の分断化が進む」状況を嘆く声が聞かれます。果たしてこれは本当でしょうか。


確かにオーディオ趣味には高価なハイエンド嗜好から若者が気軽に愉しむストリーミング迄、多くの選択肢が存在し、これらは相互に相容れない関係にあるようにも見えます。

しかしながら私はこれを「分断化」では無く「多様化」と認識しています

 

「分断化」とは元々1つだった集団が複数に枝分かれし個別の存在となる事で相互の繋がりや一貫性が失われる状態を指す言葉です。結果、互いの主張や価値観の違いから些細な事で対立に陥る関係性でもある訳です。

「多様化」も同様に元々1つの集団だったものが多様な要素や選択肢を含む現象ですが、異なる要素がパラレルに共存しあう状況であり、良く言えば互いの違いに寛容的、悪く言えば無関心に相互干渉しない状況を指します。

 

分断化を嘆く声は決まってハイエンド寄りの層から聞こえて来ますが、彼ら熱心な愛好家はオーディオ趣味が単一の価値観を共有すると誤解しています。

1960〜80年代のオーディオブーム時代と異なり、現在は装置も用途も市場も(そして何より「価値観」が)多様化されている事実に気付けていません。

さも自らが辿った道こそが”正解”と言わんばかりの傲慢さが垣間見えます。

  

分断と多様化は相反するものでなく同時に存在しうる点は認識しておく必要ありますが、愛好家の一部が「分断化」と批判的に煽る現状は、少なくとも私の目には肯定的な「多様化」と映るのであります。[了]