Flickr、誕生から20年の歴史

Flickr
Photo by Praveen.


写真共有サービス「Flickr」が20年周年を迎えました。そんなFlickrの歴史を一ユーザー視点でまとめてみました。


写真共有サービスとして老舗となった「Flickr」(フリッカー)。2004年のサービス開始以来、何度も存続が危ぶまれながらも熱心なユーザーに支えられ今日までサービスが続いています。

私自身、2006年から実に18年に渡って熱心に活用してきたユーザーのひとりですが、Flickrは他サービスに変え難い独自性を持っています。

 

【2004年 Flickr誕生とブログブーム

Flickr誕生の経緯は様々なところで語られていますが、元々はオンラインゲームの機能のひとつに過ぎませんでした。それが写真共有サービスとして分離され、当初の想定とは異なった使われ方でユーザー数が急増していくことになります。 

 

■2004年02月:Ludicorp社がFlickrサービス開始

カナダのオンラインゲーム会社Ludicorp(ルディコープ)社が手がけるMMORPG(マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム:大規模多人数同時参加型オンラインRPG)「Game Neverending」に写真を投稿して共有する機能を設けたところ、これが好評となります。

そこで、Ludicorp社は写真共有の機能だけを切り出して「Flickr」を開始します。

当初Flickrでは、1枚の写真につき1MBの制限がありました。運営側の想定では、投稿された写真を題材に複数ユーザーがチャットをする利用(=画像掲示板のチャット版)を想定していたようです。

しかし、実際の初期Flickrユーザーの多くは自身のブログ記事に連動した写真を格納しておく場所として活用されていました。

折しも当時は米国を中心にブログブームが到来していたものの、当時は未だ写真アップロード機能を持たないブログサービスも多かった為に「写真格納・共有場所」としての利用が軸となってFlickrはユーザー数を急拡大します。

かく言う私もFlickrの存在を知ったのはブログの写真格納としてのFlickrでした。

※当時Flickrでは無料アカウントユーザーは200枚までの写真が登録でき、有料Proアカウントになると200枚制限が解除されまいsた。

※因みに「Flickr」は、正しい綴りで書くなら「Flicker」(=揺らぐ光、ちらつく光)と「e」が抜けていますが、これは前述のLudicorp社が当初は「Flicker」名でサービス開始をしようとしたものの、Flicker.comドメインが既に「Flicker Beer」というビール用に取られていた為、eを抜かして「flickr.com」とします。

  

■2004年5月:タグ機能、コメント機能の追加

Flickrが優れていたのは、写真の詳細について投稿者が「タグ」で情報付けできた点でした。今でこそX(Twitter)やInstagramでは「#」つきのハッシュタグが当たり前に使われていますが、こうした投稿者自身が詳細なタグを追加することで検索精度の高い写真閲覧が可能となっていました。

 

■2004年10月:「What’s in your bag?」 の流行

カバンの中身を撮影して紹介する「What’s in your bag?」がFlickr上で流行します。この流れは最近ではInstagram等のSNSでも見られますし、雑誌などでも目にしますが、おそらくネット上で最初にムーブメントとなったのはFlickr上のコミュニティだと記憶しています。

  

【2005年 米国Yahoo!による買収】

当時、米国Yahoo!は単純な道先案内としての検索サイトの役割から自社サイト内に少しでも長く滞在して貰う「ポータルサイト」化を目指します。Webメール(Yahoo! Mail)の強化などと併せ、ユーザーのインターネット利用ニーズを米国Yahoo!内で完結させようと躍起になっていました。

ドットコムバブル(2000年)を経て、事業の再編と強化を打ち出した当時の米国Yahoo!はドットコムバブル期に蓄えた潤沢なキャッシュを活用して買収攻勢をしかけます。当時ライバルだった検索サービス「アルタビスタ」等を次々と買収した他、サービス強化のため、2005年にはRSSサービスのblo.gs社、ソーシャルブックマークのdel.icio.us社なども買収します。

そうした買収戦略の一環としてFlickrを持つLudicorp社も米国Yahoo!に買収されます。このときLudicorp社の従業員はわずか9名だったそうな(対する米国Yahoo!の従業員は当時・約12,000名!)。

 

■2005年3月:米国Yahoo!がLudicorp社を買収

米国Yahoo!に買収されたFlickr(Ludicorp社)。買収によりFlickrに変化が生じたのは、サインインに際し米国Yahoo!アカウント取得が必須となった点。これは旧来からのFlickrユーザーには不評でした(結局、2019年3月まで米国Yahoo!アカウントでのログインは続きます)。

ポジティブな変化としては、ユーザーが利用可能なストレージ枠が大幅アップしました。Flickr無料アカウントは100MBまで利用可能なのに対し、有料「Proアカウント」では容量無制限という当時としては大胆なサービス展開を行います。

ブログ記事に連動した写真保管場所としての需要が高まり、より大きなストレージを必要としていた時代性とマッチしてFlickrの有料Proアカウントユーザー数が急増します。

ちょうど日本においても2004〜2005年はブログブーム全盛期であった事から、熱心なブログ投稿者はFlickrの有料Proアカウントを使ってブログ画像の保管を行なっていました。この頃から日本国内のユーザーにもFlickrの存在感が出て来たように記憶しています。

  

■2005年3月:ホワイトハウスが公式Flikcrアカウント開始

米国オバマ大統領率いるホワイトハウスが公式Flickrアカウントを開始。大統領専属カメラマンが撮影する執務中の姿など貴重な写真が次々と公開されます(後日談ですが、トランプ大統領就任後もアカウントは継続されましたがオバマ時代の写真はすべて削除され、別アーカイブされています)。

 

■2005年6月:Flickr Badgeの流行

前述のようにFlickrはある種、当時の「意識高い系」や「アーリーアダプター」達が好んで用いる洗練されたサービスなる存在感が漂っていました。

そんな中、Flickrユーザーで流行したのが「Flickr Badge」。これはFlickr非公式ながらも、あたかもFlickrが発行したようなIDカード風のバッヂが作れるというもので、当時流行ったジェネレーター系サイトの1つでした。

   

【2006年 米国Yahoo!サービスとの融合】

2006年、米国Yahoo!がライバルであるGoogle社のサービスに対抗するため、Flickrとの連携を強めます。

ここで少し時を遡り、ドットコムバブル当時(1996〜2001年頃)の米国Yahoo!を振り返ってみます。当時、米国Yahoo!は最初期に於いては検索エンジンとして人力作業を中心としたカテゴリ登録によるインデックス方式を採用していました。程なく独自開発で検索エンジン化したものの2000年6月に独自開発をストップし、Google社の検索エンジンを採用します。当時は検索エンジンの自動化でGoogleが急成長していた時期でした。

検索サイトにおけるGoogleの存在感が高まるにつれ、2004年2月から米国Yahoo!は再び独自の検索エンジンに戻ることとなります。米国Yahoo!としては一度断念した独自方式に再挑戦する形となります。この際、検索結果にFlickrの画像を活用する連携が持たれます。

 

■2006年8月:米国Yahoo!検索結果にFlickr登場、ジオタグ対応

当時ポータルサイト化を進めていた米国Yahoo!。検索結果においても自社傘下のサービスに寄せるようになり、検索結果にFlickrに投稿された写真が登場するようになります。

当時、Google社が「画像検索」を本格化させていましたが、Flickrを傘下に持つ米国Yahoo!なりのアドバンテージ発揮という意図だったのかも知れません。

また、地図サービス「Yahoo! Map」との連携を行うジオタグ(位置情報のメタデータ)にも対応。こちらもライバルのGoogle社が2005年からベータ版でのサービス開始をした「Google Map」に対抗・強化していく施策であったと考えられます。

※いま思えば最もFlickrが注目されていた時期であり、実際のところユーザー数も当時1位だった音楽系SNS「MySpace」や、当時2位だったSNS「Hi5」(米国の他、タイやモンゴル、ペルーなど局地的に利用者のいるSNS)に続いて、Flickrは世界で3位のユーザー数を誇っていた時期でもあります。私がFlickrを使い始めたのも正にこの時期でした。

 

【2007年 サービスの強化

振り返ってみて、Flickrが最もアクティブに新機能を盛り込む等サービス強化をしていた時期にあたります。月間来訪者数が2,700万人→4,200万人と約1.6倍に増えるなど、右肩上がりの状況でした。


■2007年04月:写真プリント「Imagekind」と提携

オンデマンド写真プリントのサービスを行うImagekind社と提携し、Flickrに登録した写真のプリントアウト注文がオンラインで可能となります。日本ではサービス展開されていなかったので詳細は追っていませんが、サービス開始時は米国内のみを対象としていたと記憶しています(その後、対象地域が拡大したのかは分かりません)。

 

■2007年5月:米国Yahoo!が「Yahoo! Photos」終了を発表

ポータルサイト化を進める米国Yahoo!のサービスのひとつであり、オンライン写真ストレージとして2000年3月にスタートした「Yahoo! Photos」。Flickr買収時から、類似サービスが同じ米国Yahoo!内に共存していた事は指摘されており、Flickrとの統合が噂されていました。

米国Yahoo!が下した結論は、Yahoo!Photosのサービスを2007年9月にて終了し、Flickrに一本化させること。それほど大きなニュースに為らなかった事やFlickrの仕様が何も影響を受けなかった事からも、元々Yahoo!Photosのアクティブユーザー数は限られていたのかも知れません(日本語化の必要性はあまり感じませんが、サービスの決済に日本円が使えるようになると良いですね・・・)。   

 

■2007年6月:多言語対応

英語に加えてフランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、韓国語、繁体字中国語(=台湾、香港、マカオ)に対応。Flickrは日本からのユーザーもそれなりに居ると思っていたのですが、現時点(執筆の2024年5月現在)でも日本語化はされていません。

   

■2007年10月:ジオタグ機能のアップデート

ジオタグ機能そのものは、前年の2006年8月に対応済みも機能強化され、地図上からジオタグの場所を選択可能となります。これにより直感的に地図上から見たいエリアを選択し、そこに関連した写真を見ることができるようになりました。

 

■2007年10月:Edit Photo機能の追加

米国Picnik社と提携し、オンライン上で写真の簡単な編集(トリミング等)ができる「Edit Photo」機能が追加されました。このPicnik社は2005年創業したオンライン写真編集サービスですが、Flickrが提携した後の2010年にGoogle社によって買収されてしまいます(2013年にPicnik社は消滅)。

Google社は「Flickrなどのサードパーティーに対しPicnik社買収後も使用可能」としたことでFlickrは暫くPicnik社の機能を使い続けますが、2012年4月にAviary社のサービスに入れ替えを行う形でEdit Photo機能を継続します。

  

■2007年12月:有料Proアカウントに統計機能を追加

有料Proアカウント(当時:年額$24.95)では、自分の投稿した写真のアクセス数や検索ワード等の分析が可能となります(Proアカウントのユーザーは「Stats」より参照可能)。

尚、検索ワードについてはGoogleなど検索サイト各社がSSL化したことでデータ表示ができず(いわゆる「not provided」となり)詳細を追うことはできません(=どのようなキーワードでGoogle検索してFlickr上の自分の写真に辿り着いたのかが見れなくなってしまった)。

 

【2008年 Flickr、生みの親が退職

この年は、Flickrの生みの親である、スチュワート・バターフィールド氏(Stewart Butterfield)と、その妻のカトリーナ・フェイク氏(Caterina Fake)が米国Yahoo!を退職し、Flickrの運営から離れる事になります。前年の機能強化とは正反対に、2008年以降、Flickrの進化は急ブレーキが掛かることになります。

スチュワート・バターフィールド氏は、その後2013年に「Slack」社を創設します・・・そう、あのコミュニケーションツールとしてエンジニアを中心に世界中で使われて居る、あのSlackです(!)。妻のカトリーナ・フェイク氏は米国Yahoo!退職後すぐにクリエティブ・コモンズの理事になった他、起業も手掛けるなどテック業界で活躍しています。

 

■2008年2月:Flickr上で、MS社による買収反対運動が展開

以前から噂レベルであったものの、この頃になるとマイクロソフト社が米国Yahoo!を買収する話が公然と語られるようになります。実際、米国Yahoo!はライバルであるGoogle社との勝負で負けが鮮明となってきており、2006年頃からマイクロソフト社による買収交渉をしていました。

一方のマイクロソフト社も当時、反トラスト法違反で米国司法省と激しくやり合っている時期であり、まさにEvil(イビル:邪悪)な存在と見做されていた時期でもありました(そう遠く無い将来、Googleもイビルな存在であると人々は気づく訳ですが、それは未だ先の話)。

こうした背景から、Flickrの親会社である米国Yahoo!をマイクロソフト社が買収することに嫌悪と危機感を持った熱心な一部FlickrユーザーらがFlickr上で反対運動を展開していました。

 

■2008年4月:動画機能「Video On Flickr」の導入

有料Proアカウントを持つユーザーのみ、最大90秒且つファイルサイズ最大150MB迄の動画をアップロードできる機能「Video On Flickr」を追加します。

当時、爆発的に利用者を伸ばしていた動画サービス「YouTube」(2005年サービス開始、2006年にGoogleが買収)を意識しての機能追加であったものの、Flickr側が想定した利用は動画尺の短さやファイルサイズの小ささからも分かるようにモバイルフォン(=当時は未だ初代iPhoneの時代であり、いわゆる伝統的なガラケー時代。尚、初代iPhoneは動画非対応で、2009年発売のiPhone3GSから動画対応)での利用を想定されたものでした。

そうした意味で、後の「Instagram」(2010年)や「Snapchat」(2011年)を先取りした試みなのですが、この萌芽を活かせ無かったのが今に続くFlickrの脆弱で不安定な状況を生み出した元凶と言えます。

 

■2008年5月:マイクロソフト社、米国Yahoo!買収を撤回

マイクロソフト社による米国Yahoo!の買収交渉は金額が折り合わず決裂。米国Yahoo!共同創業者のジェリー・ヤン氏が金額交渉を譲らなかったようですが、当時の空気感は「米国Yahoo!は死に体のくせに何を強気に・・・」と呆れた感じだったのを記憶しています。

すでに検索サイトとしてGoogleが不動の地位になっており、ポータルサイト化も競合する各社が乱立状態にあり、米国Yahoo!としての優位性も見出せない状況にありました。

 

■2008年7月:Flickr、生みの親が退職

スチュワート・バターフィールド氏(Stewart Butterfield)と妻カトリーナ・フェイク氏(Caterina Fake)が米国Yahoo!を退職し、Flickrの運営から外れます。先述の動画機能「Video On Flickr」など時代を先取りした新しい試みはこれ以降、Flickrからは出て来なくなります。

スチュワート・バターフィールド氏の退職について、後日談として語っている内容から拾うと、およそ以下のような理由が挙げられています。

(1)米国Yahoo!は巨大企業のため意思決定に時間を要する点

(2)写真ストックのために膨大なサーバリソースを費やす利益率の低い点

(3)米国Yahoo!がFlickrの培ってきたコミュニティの価値を評価していない点

(4)Flickrの独自コミュニティと米国Yahoo!との方向性アンマッチ

とくに(4)について象徴的な出来事が約1年後に現れます(詳細後述)。Flickrの画面上に米国Yahoo!のロゴが掲載されるようになり、多くの古参Flickrユーザーが抗議の声を上げる事態になっていました。Flickrのサービスを愛するユーザーにとって米国Yahoo!はブランド価値を毀損し、平和なコミュニティを掻き回す存在に思えたのです。

 

■2008年12月:モバイルでも動画再生が可能に

iPhone等、モバイルでも動画機能「Video On Flickr」が再生可能となります。HTML5がようやく一般的となったタイミングでした。

  

2009年 Flickr停滞のはじまり

時代はいわゆる「世界金融危機」の時代に突入します。2007年に顕在化したサブプライムローン問題をきっかけに、2008年秋には後に「リーマン・ショック」と呼ばれる金融危機に陥ります。

前年にFlickr生みの親が退職した米国Yahoo!はマイクロソフト社からの買収も頓挫。2008年末には1,500名規模でのリストラを行う等の苦しい経営が続きます。不況と米国Yahoo!の不振状態が重なり、2009年はFlickrとして目ぼしい進化の無い年になります。

いま振り返って見れば、前年の2008年を契機に2009年以降が長らく続くFlickr長期停滞の始まりでした。

 

■2009年6月:Yahoo!ロゴの追加

正確な時期は覚えていませんが、ちょうどこの頃からFlickrのロゴに添えられる形で米国Yahoo!ロゴも併記されるようになります。

前述のように米国Yahoo!はマイクロソフトへの身売りにも失敗し、キャッシュ的にもサービス的にも行き詰まり感が漂っていました。そこで米国Yahoo!ブランドの統一感を出す目的か、米国Yahoo!が持っていた各種サービスにも続々と米国Yahoo!ロゴが表示されてるようになります。

これに対し、旧来からのFlickrユーザーは猛反発。既にネガティブなイメージしか無い米国Yahoo!のブランドロゴを冠する事に何の意味があるのか?、そしてこれは米国Yahoo!がFlickrの現行サービスに大きく手を入れようとする前触れでは無いのか?、など当時は色々な憶測が飛び交います。

米国Yahoo!はドットコムバブル以降の2002〜2007年頃まで、Flickrをはじめとした各種サービスを次々と買収し米国Yahoo!傘下に納めてきました。しかし各サービスの多くは買収前と変わらない独立したサービスの装いで継続されていました。

買収前から当該サービスを使うユーザーとしては有り難い話ではありますが、米国Yahoo!としての統一したサービスという感じには実際乏しかったのも事実です。

米国Yahoo!が緩やかな統合を目指していたのか、それともサービスの整理統合に興味を持たなかったのか(≒そこまで余力が無かったのか)は分かりませんが、米国Yahoo!の低迷期を印象づける出来事でありました。

 

■2009年7月:Twitter連携機能「Flickr2Twitter」開始

Flickrに投稿した写真をTwitterで共有できる連携機能「Flickr2Twitter」が開始されます(2011年4月にFacebookなど各種SNSに連携する「Share This」機能にアップデート)。

いまでこそソーシャルメディアへの連携は当たり前の機能ですが、当時は未だTwitter誕生から3年しか経過していない時期であり、ちょうど各サイトで連携機能が実装されはじめた頃でした。

Twitterのユーザー数も2009年1月時点でのユーザー数20万人から、2009年7月には78万人を突破する急成長を遂げており、この「Flickr2Twitter」開始はベストなタイミングだったと言えます。

以前はブログ画像の保管場所に重宝されて急成長したFlickrが、Twitterにも取り組んだのは必然だったのかも知れません。当時のTwitterにFlickrの写真がどのように影響を与えていたかは実感がありませんが(正直ほとんど目にしませんでしたが)SNS連携よる写真埋め込みの先駆け的な機能でありました。

    

■2009年9月:iPhoneアプリがリリース

同年6月にApple社からiPhone 3GSがリリースされ本格的なスマホ時代が幕開けとなります。

いまでこそ当たり前な「アプリ」を通じたサービスの利用がようやく一般的に使われ始めた頃にあたります。iPhoneのApp Store開始は2008年7月(当時はiPhone 3G=2代目iPhone)であり、続く2009年6月のiPhone 3GS(3代目iPhone)から本格的に普及します。

実際、iOS App Storeでは、この一年だけで約20万本のアプリがリリースされたと言いますから、そのアプリ開発競争にFlickrとしてもうまく追随できていたと言えます。

ただし、Android版アプリのリリースは2011年10月まで待たねばなりません。

  

■2009年9月:「Galleries」機能追加

Galleries機能はユーザーが作成する任意のギャラリーにFlickr上のお気に入り写真を18枚まで選択して展示できる機能。

従来までの単純な「Fave」(お気に入り)機能から自分の気になる・気に入った写真をカテゴライズして登録できる機能となりますが、いかんせん1つのギャラリーに登録上限数が18枚迄がネック。

Flickr側としては、その名の通り純粋にギャラリーとして自分が選りすぐりの写真を他のFlickrユーザーと共有するための使い方しか想定されていないと感じる仕様です。現在においてもあまり普及していない機能と考えます。 

 

■2009年10月:「People Tag」機能の追加

写真内の人物にフォーカスしてタグ付けできる、People Tag機能が追加されます。

  

【2010年 ほぼ動きのない一年】

米国Yahoo!の低迷を象徴するように、Flickrもほぼ動きのない一年となります。

 

■2010年6月:UIの小変更

以前よりも写真が少しだけ大きく表示され、ジオタグに基づく地図も傍に表示されるようになります。

ちょうどこの頃、一般的なユーザー側のディスプレイサイズがXGA(1024 x 768)からSXGA(1280 x 1024)などに拡大されていった時期でもあるため、従来のUIでは余白の多い感が否めませんでした。

このUI小変更はFlickr内の各種コミュニティでも歓迎されていたのを記憶しています(むしろ遅いとの批判さえ・・・)。

 

【2011年 変化の兆候、チャンスに活かせず】

前年同様にFlickrにほぼ動きない一年となります。この年は時代の転換点を象徴する大きな出来事がFlickrにおいて顕在化します。投稿される写真がデジカメからiPhoneに移り変わった時期でした。Flickrはユーザーデータの収集によって誰よりも早くこの事実を察知していながら、チャンスとして活かすことの無いまま傍観。・・・そしてInstagramが台頭します。

 

■2011年2月:スタッフのミスによりアカウントが削除

Flickr運営スタッフのミスにより、ある利用者アカウントが削除される問題が生じます。そのユーザーは5年間分(約4000枚の写真)が消失した上に復旧ができない状況となります。

この出来事がニュースとして話題となった理由は、他でもないFlickr側がリストア機能などを持たずに運営していた杜撰さ(!)が露呈した事にあります。ただでさえポジティブな話題に欠けていたFlickrにとって、ユーザー側にサービス利用継続の再考を促すきっかけとなります。

   

■2011年4月:「Share This」機能を追加

これまでTwitterへの連携を行う「Flickr2Twitter」はありましたが、これを拡大しTwitterに限らずFacebookなどSNSへの簡単共有を行う「Share This」機能を追加します。

   

■2011年5月:Flickrで最も使われるカメラがiPhone4になる

Flickrでは投稿される写真のExif情報から使われたカメラ機種を判別することが出来ますが、これまで一眼レフカメラNikon D90が最も多かったのが、iPhone4に置き換わるという出来事が生じます。

これは写真を撮る行為がカメラ専用機からスマホに転換したことをエビデンスでFlickrが証明した訳ですが、これに対するFlickr側の反応は無し。変化の兆候をもっと早くから掴みながらも、チャンスに活かせずに終わります。

事実、カメラ出荷台数も2011年から減少になる等、まさに時代の転換点でした。Flickrに変わって時代の変化を捉えて刺さりこんで来たのは、ご存知「Instagram」(2010年10月)。

Instagramはスマホに特化したサービスとすることで、開始から僅か約半年あまりで爆発的にユーザーを獲得。2011年中にその地位を決定的なものにします。

・・・本来、この地位に最も近かったのは他でもないFlickrであった訳ですが、Flickrは全く動こうとしませんでした。

 

■2011年9月:Android版アプリのリリース

iPhone版アプリのリリース(2009年9月)から2年遅れてAndroid版アプリのリリースとなります。これはFlickrのせいというよりもAndroid OS側の問題と私は考えます。

実際、Android OSがマトモに使えるようになるのはAndroid 2.3以降(2010年12月)な印象であり、かのInstagramもAndroid版リリースは2012年4月まで待たねばなりません。それ程、当時はiPhoneとAndroidに差がありました。

   

■2011年10月:投稿された北朝鮮の写真が話題に

香港に住むサム・ゲルマン氏が投稿した北朝鮮の写真が話題に。2011年9月の投稿から約1ヶ月でアルバムが22万ビューを達成します。

  

【2012年 存在感の消失】

これまでFlickrはナンだカンだ悪評はあっても其れなりにユーザー数もいて活動も見られました。それが2012年、Instagramや他SNS(ソーシャルメディア)の台頭と共に、ネット上からはFlickrの存在感が消えていきます。

 

■2012年4月:EditPhoto機能の変更

2007年に追加されたEditPhoto機能はPicnik社の技術を用いていました。そのPicnik社が2010年にGoogle社に買収されたことから、FlickrのEditPhoto機能はAviary社の技術に変更されます。

新旧ともに私はEditPhoto機能を使ったことない為、詳しくは分かりませんがパッと見では機能アップした感じは殆ど見られませんでした。

    

■2012年4月:ドラッグ&ドロップによるアップロードに対応

ブラウザからドラッグ&ドロップによる写真アップロードが可能になります。

  

■2012年12月:iOS版アプリのアップデート

従来の等幅サムネイル表示(写真の一部分は欠けて表示される)から、写真全体が表示されるサムネイルに変更されるなど小変更が行われています。InstagramのUIを意識したモダンな作りとなります。

FlickrはiOS版アプリを早い段階(2009年9月)にリリースしているもののアプリの出来は酷く、ようやくマトモなアプリになった・・・かな?という感じでした。

しかし・・・時すでに遅し。スマホからの写真投稿はInstagramに席巻されます。もう誰もFlickrのことなど思い出してくれません。

このアップデートがもっと早くに実現していれば・・・もしかしたらFlickrは今のInstagramになっていたカモ知れませんね(?)。

  

【2013年 起死回生のFlickr大幅刷新】

この年はFlickrにとって最も大きなアップデートとなります。ここまでの刷新はこれまでありませんでした。

そして驚くべきは、この大幅刷新から現在(執筆時点2020年5月:加筆2024年5月)に至るまで、基本的にそのままの状態でサービスが続けされていること。

Flickrユーザーは機能のアップデートよりも現状維持で精一杯なのかも知れません(ユーザーも現状維持を望んでいるのかも)。


■2013年5月:大幅刷新(1) UIの刷新

従来、サムネイル状の小さな写真と説明文がセットになった一覧表示から、当時流行しだしたフラットデザインを取り入れてタイル状に写真がグリッド配置されるユーザーインタフェース(UI)に刷新されます。

非常に洗練されたデザインであることや、改めて写真ファーストなUIとなったことで古臭かったFlickrのUIが一気にモダン化。この新UIは既存ユーザーからも好評でした。

尚、旧来のUIを好むユーザーには旧表示での方法も残していることにFlickrの配慮が伺えます。

 

■2013年5月:大幅刷新(2)料金プランの刷新

Flickrはマネタイズ方法として、従来の会費収入から広告収入に軸足を移そうとします。そこで発表されたのが有料会員の料金プラン大幅変更です。

従来タイプの有料Proアカウントが廃止され、広告表示の無料カウントプラン等、料金プランが刷新されます。しかし、複雑で合理性に欠いたプランにはFlickr内の各種コミュニティでは否定的な意見が多く見られました。


Flickr料金プラン体系(2013年5月時点)

・有料Proアカウントの廃止

 新規Proアカウント登録は廃止され、既存のProアカウントユーザーのみ年額$24.95で更新可能となります。

※当時は私もProアカウント継続を希望。ところが米国Yahoo!「Yahoo! Wallet」に登録のクレジットカード情報が何故か無効とされ更新ができずProアカウントが失効。何度もFlickrサポート窓口にEメールで問い合わせするも無視されました。ユーザーサポートの余力も無かったのでしょうか。

・無料プランはストレージを1TBに拡充

有料ユーザーの獲得に苦労していたFlickrは収益モデルを流行の広告収入に切り替えることにし、ユーザーは基本的に広告表示される無料アカウントとなります。

その代わり1TBまで大幅容量アップ(従来まで無料アカウントは月300MB迄+最新2,000枚迄だったり、写真ファイルのダウンロードができない制約もあった)。アップロード可能な1枚あたりの写真容量は200MB迄。

・Ad Freeプラン(年額$49.99)

広告を消すには年額$49.99を支払う必要がありますが、ただ広告が消えるだけ。容量1TBまで、1枚あたり200MBまで利用可能。

・doublrプラン(年額$499.99)

最も物議を醸したdoublrプラン。年額$499.99(!)の大金を支払うことで、広告表示なし&最大2TBまで容量が使えます・・・が、Ad FreeプランのIDを2つ取得するのと一体どう違うというのか疑問でした。このdoublrプランは2013年末にいつのまにか消えています。

 

上記のように有料アカウントは”わざと魅力を欠いた設定”とすることで無料プランに誘導し、安定期な広告収入とその拡大を目指したのではないか?と当時は噂された程に奇怪なプラン構成でした。

既存Flickrユーザー(とりわけ有料Proユーザー)にはメリットが無く、新料金プランについては総スカンを食らう訳であります。

 

■2013年5月:大幅刷新(3)Androidアプリ大幅アップデート

前年12月のiOS版アップデートに遅れること半年でAndroid版アプリも刷新。ようやく使えるアプリとなりますが、Instagramに席巻されており話題にはなりませんでした。

 

■2013年5月:Flickr is a Service,Not a SNS の運動

Fickr運営側は先述の大幅刷新により(従来の有料会員からの収入に頼るのでは無く)広告収入を軸としたマネタイズに変わろうと試みました。

これは当時FacebookをはじめとしたSNSが莫大な広告収入を得ていたからですが、そのためにはFlickrにより多くのユーザーが頻繁に訪問し、沢山の時間をFlickr内で費やして貰う必要が生じることを意味します。 

前述のように初期Flickrがユーザーを獲得した理由の1つにブログ等の画像保管先として用いられるケースがありましたが、これはFlikcrが意図した広告収入にはつながらず。

加えてFlickr内に各種コミュニティは存在するものの、Flickr衰退により全盛期(2005〜2009年頃)ほど活発に活用されるには至っていません。それにも関わらず広告収入モデルの導入を宣言したことは実に矛盾していました。


「Flickr is a Service,Not a SNS.」=「フリッカーはサービスであり、SNSでは無い」、こうした反発の声がFlickr内コミュニティに見られるようにさえなりました。広告収入モデルにするにはユーザーの滞在時間を伸ばす為にFlickr上にある数多くの写真コミュニティをSNS的に活用・発展させる必要がありますが、Flikcrの既存ユーザーはそうした使い方を望んでいませんでした。FlickrはSNS的な発展を目指すのではなく、あくまでサービスに徹するべきだ、との主張です。

結局この運動はイマイチ盛り上がることなく、Flickrユーザーが静かに立ち去っていきます。盛り上がらなかった理由として、は既にFlickr内に存在する多くの「Groups」(=Flickr内でカテゴリ分けされたコミュニティ)上で活発に意見交換などされる姿はなく閑散としたまま放置されるのが実態でした。

既に過疎ったコミュニティに無料1TBストレージ目的の新規ユーザーが流れ込んで来ても活性化に繋がるどころか、良くてコミュニティが荒れるだけなのは明らかでした。

この時期、Flickrが目指した広告収入への切り替えが後に頓挫したのは、他ならぬこれまでの米国Yahoo!の「Flickrへの無関心・無理解」にあったと言えるでしょうね。もっと違ったモデルを目指すべきでした。

 

尚、後に(2018年)、Flickrのプロダクト責任者がSmugMugによるFlickr買収後にflickrブログ内で語った内容によると「かつて活発だったFlickrのコミュニティが破壊されたのは、無料プランに1TBもの大容量を開放したことに原因があった」と述べています。

上記より該当箇所を引用↓

"In 2013, Yahoo lost sight of what makes Flickr truly special and responded to a changing landscape in online photo sharing by giving every Flickr user a staggering terabyte of free storage. This, and numerous related changes to the Flickr product during that time, had strongly negative consequences."

2013年、米国Yahoo!はFlickrが持つ特徴を見失い、全ユーザーに1TBもの無料ストレージを提供した。これと、その間に行われたFlickrへの数々の変更は悪影響をもたらした。

"First, and most crucially, the free terabyte largely attracted members who were drawn by the free storage, not by engagement with other lovers of photography. This caused a significant tonal shift in our platform, away from the community interaction and exploration of shared interests that makes Flickr the best shared home for photographers in the world. We know those of you who value a vibrant community didn’t like this shift, and with this change we’re re-committing Flickr to focus on fostering this interaction."

第一に最も重要な点は1TBもの無料ストレージは写真愛好家同志のコミュニティではなく、無料の容量に惹かれた人を引き寄せた。Flickrを世界で最も優れた写真家のための共有場所としてのコミュニティでの交流や趣味の場所としての活用から変化を引き起こした。活気あるコミュニティを重視する旧来からのFlickrユーザーがこの変化を好まなかったと理解している。私たちは再び約束する。Flickrが写真コミュニティの促進に重点を置くことを。

つまり無料1TBストレージに惹かれてFlickrに傘下した新規メンバーは、従来からの写真を楽しむことを目的としていたユーザー層と根本的に動機が異なり単に無料の便利な外部ストレージとしてしか見ておらず、Flickr内のコミュニティ破壊に繋がってしまったとの意見です。

米国Yahoo!がFlickr上での広告収入によるマネタイズを目指すのであれば、Flickr内のコミュニティを盛り上げる必要があったのですが、当時そこはユーザー側に丸投げされていました。しかも、Flickrを単に便利なストレージとしてしか見ていない層は、それこそスマホで撮影したメモ程度の画像やネットで拾った画像などを大量に投稿するだけでFlickr全体の写真クオリティが大きく低下しました。

今となっては「でしょうね」な話ですが、2013年当時のネットサービスは猫も杓子も広告収入モデルを目指していたので株主からのプレッシャー等も想定され、仕方のない事なのかも知れません。

  

■2013年9月:iOS 7 との統合

Apple社のiOS 7からTwitterのようにOS内に統合されるようになります。これはiPhoneで撮影した写真をそのままFlickrにアップロードできる機能ですが、スマホで撮影→SNS共有は既にInstagramやFacebookが主流。残念ながらiOSとの統合でFlickrが再び盛り上がる現象は見られませんでした。

 

【2014年 Flickr完全オワコン化】

この年になるとFlickrは、ほぼオワコン化します(「オワコン」なる表現自体、死語になりつつありますが・・・)。

ライトユーザーが撮影した写真は主にFacebookやInstagramにアップされ、一方で従来からのヘビィなユーザーはFlickrを離れて「ImageShack」や「500px」など他の写真共有サービスに流れていった時期でした(Google Photosのローンチは翌年2015年から)。

   

■2014年2月:Flickr、10周年

2004年2月10日のサービス開始からFlickrは10周年を迎えます。

  

■2014年4月:iOS版/Android版アプリのアップデート

iOS版/Android版のアプリが共にVer3.0となり、これまでiOS/Androidでバラバラだったアプリのバージョン(及び仕様)がここで統一されます。

 

■2014年6月:Bad,bad panda!連発

当時いわゆる「Bad,bad panda!」と呼ばれるFlickrのサービスがダウンしている時に表示されるパンダの画像が頻発。Flickrはサービス稼働自体が不安定な状況にありました。

 

■2014年7月:「Marketplace」開始

写真ライセンスプログラム「Marketplace」を開始。Flickrに投稿した写真を販売して収益化できるプランですが、わずか2年後の2016年9月には終了します。

これは競合サービスの「500px」等に対抗したものでしたが、既に収益化プランを大々的に打ち出していた他サービスを追随するだけでは利用拡大は望めなかったのかも知れませんね。

 

■2014年10月:iPadに最適化したアプリをリリース

従来のiOS版アプリはiPhoneの画面サイズにあわせて作られていましたが、新たにiPadの大画面を活かしたiPad専用版アプリがリリースされます。

 

■2014年10月:20 under 20 アワード

20歳以下の若い写真家20選のアワードを実施。華やかにニューヨークでセレモニーも実施されました。

  

【2015年 有料Proアカウント制、復活

2013年にモダンなUIへと刷新されたFlickrですが、一部の熱心な古参ユーザー以外にアクティブなユーザーを見かけることが無くなったのが、この2015年頃からでした。

廃止された有料Proアカウントが復活したのも、この年。無料プランで1TBの大容量を提供して新規ユーザーを獲得し広告収入モデルへの移行を試みたのがうまく機能していなかったようです。Flickrは旧来からの「有料サービス」に軸を移します。

Google Photosのサービスが開始され、Flickrを単に画像ストレージ活用してユーザーの多くがGoogle Photosに移行した印象を持ちました。

  

■2015年5月:Flickrの検索機能が強化

Flickr内の検索機能が強化され、写真の「色」といった曖昧な検索条件からも探せるようになります。

 

■2015年5月:Google Photosがローンチ&容量無制限に

米国Google社の写真共有サービス「Google Photos」がローンチ。さらに無料で容量無制限(当時)となり制限のあるFlickrの無料プランを使う理由が無くなります

Flickr上でも「Google Photosに移行しました」とする人が続出したのを覚えています。

   

■2015年7月:有料Proアカウントの復活

2013年5月に廃止した有料Proアカウントプランを復活。月額$5.99もしくは、年額$49.99に設定されます。

また、併せて2013年5月の料金プラン改訂前の旧・有料Proアカウントで契約継続をしているProアカウントのユーザーには、向こう2年間は旧Pro価格である年額$24.95での更新契約ができる事も約束しています(〜2017年7月迄)。

 

■2015年9月:高画質を維持した圧縮技術の導入

デジタルカメラの高画素化に伴い増大するファイルサイズを高圧縮するため、Flickrでは高画質を維持しつつファイル容量を高効率に圧縮する視覚特性を活用した技術を導入します。これによりファイルサイズを抑えながらも閲覧環境の描画速度向上を果たします。

 

■2015年11月:米国Yahoo!の画像検索結果にFlickr写真が使用

Flickrは写真を投稿したユーザー自らがタグ付けする等、既に精度の良いインデックス化がされていたことから米国Yahoo!は自社の画像検索結果にFlickr写真を利用しはじめます(逆に言うとこれ迄まったく活用していなかった!)。

しかしライバルGoogle社の画像検索サービスは既に2012年段階でアルゴリズムの調整を終えており、類似画像検索など「画像検索といえばGoogle」という程に安定していました。

今更Flickrのインデックスを画像検索に活用したところで、Googleに対するアドバンテージには成らなかったのが現実です。

  

■2015年12月:Gear VRで360度パノラマ写真に対応

韓国サムスン社のVRゴーグル「Gear VR」で360度パノラマ表示できる謳い文句でしたが、VR自体が未だ全く(そして当記事執筆現在においても)普及していなかった為、全く話題になりませんでした。

  

【2016年 Flickrって、まだあったの?】

2014年以降、Flickrはネット上から急速にそのプレゼンスを失い、2016年頃には殆どの一般ネットユーザーはFlickrの存在すら知らないといって過言じゃない程になります。

   

■2016年3月 It’s Not Me, It’s You, Flickr.

It’s not me, It’s you, Flickr. We’re done. 」「私じゃない、Flickrあなたよ。私たちはおわったの」。

カメラや写真の情報を集めたサイト「DigitalRev」に書かれた記事(現在は既に削除されている)が話題となりました。あんなにトキメキを覚えたFlickr、それが今や魅力の無いサービスに成り下がってしまったことを嘆く記事でした。恋人との別れのように。

 

■2016年7月:ベライゾン社が米国Yahoo!を買収

米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ社が米国Yahoo!を買収します。ベライゾン社が傘下に持つインターネットサービスプロバイダのAOL社と統合されることになります(実際にAOLと統合されたのは、買収手続きが完了した2017年6月に。新会社「Oath Holdings」として再出発し、FlickrはこのOath社の傘下となります。この関係は2021年迄続きます)。

つまり間接的ではあるものの、Flickrはベライゾン社の所有となりました。

 

■2016年9月:「Marketplace」終了

2年前にスタートした写真ライセンスプログラム「Marketplace」が終了します。ユーザーの収益化を促すライセンスプログラムでしたが、既にそうしたユーザーは他社サービスに移っていたこと等から全くインパクトを与えることなく、ひっそりとサービスが終了されることとなりました。

  

■2016年12月:米国Yahoo!個人情報流出

米国Yahoo!の個人情報流出問題で10億人が影響を受けます。Flickrアカウントにも影響が出て、Flickrログオン時のパスワード変更が必要となります。米国Yahoo!は2016年9月にも5億人以上の個人情報流出をしており、あわせて15億人分。

私も下記のように米国Yahoo!から情報漏洩の知らせがきました↓


・・・さらに後に判明するのですが、実は2013〜2024年に発生したサイバー攻撃によるアカウント情報窃取事件で全ユーザー30億人分のアカウント情報も流出していました(米国Yahoo!はこの問題を2016年9月まで公表しませんでした)。

 

【2017年 失われた1年】

この年、Flickrは実質大きな動きが何も無い1年となりました。

前年にベライゾン社による米国Yahoo!買収を経て、旧Yahoo!事業の再編が行われている中、Flickrに関する動きがなにも無かったことから「いよいよFlickrもサービス終了か?」なんて囁かれた頃でもあります。

Flickr内のあらゆるコミュニティが過疎化・閉鎖が進み、私がフォローしていたユーザーの多くもこの時期にはほぼ姿を見なくなる程でした(実際いまでも2017年頃から新規写真の投稿がされずに放置されたままのアカウントをよく見ます)。

 

【2018年 SmugMugがFlickrを買収】

ほぼ死に体と言える状況にまで悪化したFlickrでしたが、写真共有サービスを展開する中堅企業・SmugMug社がFlickrを買収します。


■2018年4月:SmugMug社がFlickr事業を買収

Verizon/Oath社の傘下だったFlickr事業を米国SmugMug社が買収を発表します。

SmugMug社は2002年から続く写真共有サービスですが、FlickrやGooglePhotos等と決定的に異なるのは、プロの写真家やハイアマチュアの写真家たちを中心に高クオリティの作品を発表する場として進化していった点です。

SmugMugのサービスは有料会員のみで、自ら投稿した写真に電子透かしを入れたり、写真販売による収益化ができた写真に特化した高機能化を只管突き進めていく硬派なサービスでした。

そうした「写真のことをよくわかっている」SmugMug社がFlickrを買収してくれたことはFlickrユーザーにとっては救いだったのでしょう。反面、ファイナンス面では決して余裕がある訳では無いSmugMug社が果たして膨大なサーバ費用を必要とする金食い虫Flickrを維持しつづけられるのか疑問の声が上がっていました。

  

■2018年11月:SmugMag体制後の新料金プランを発表

SmugMag体制後、さっそくFlickrの料金プランが見直されました(新料金の適用は2019年1月から)。

2013年5月から引きずっていた課題の多かった無料アカウントによる広告収入プランはお世辞にも成功しておらず、SmugMagのサービスのように有料化プランを軸としたものに変更されることは予想されていました。そして、予想通りに新料金プランは無料「Free」と有料「Pro」の2つを軸としたプランに変更されます。

 

・無料「Free」プラン

1アカウントあたり1,000点までしか保存できなくなる。従来同様に最大容量は1TBまで。広告表示あり。

・有料「Pro」の「Monthly Plan」

有料のPro「Monthly Plan」では、月額$5.99を支払うことで、容量制限なし+広告なし+動画アップロード最大10分迄可能(従来は90秒迄→いつのまにか3分迄可能になっていた→今回10分迄に変更)。

・有料「Pro」の「Annual Plan」

有料のPro「Annua Plan」は、1年契約により年額$49.99とMonthly Planよりも割引で契約できます。容量制限なし+広告なし+動画アップロード最大10分迄可能+Adobe製品などの割引優待購入も受けられるプラン。

 

最初期の有料Proアカウントが年額$24.95だったことを考えると、安価なAnnual Planでも年額$49.99と2倍の値上げになっている事が分かります。

  

【2019年 赤字Flickr、更にキャッシュが必要】

SmugMag社に買収されたFlickrですが、Flickr事業は赤字垂れ流しが続、きSmugMag社のCEOが有料ユーザーに泣きを入れる程になりました。相次ぐ料金プランの値上がりなどから、古参ユーザーも決定的に減った1年だったと考えます。

  

■2019年1月:新料金プランの実施

前年11月に発表された新料金プランが実施されます。SmugMagのサービスに倣って有料Proアカウント会員数の増加を目指すことに。Flickrとしてある意味で原点回帰です。

ただ、この機会に(年額$49.99という有料Proプランを敬遠したのか)しつこく残っていた古参ユーザーの多くがこの時期にFlickrを去っていきました。 

 

■2019年3月:無料プランの超過分写真の削除を実施

新料金プランにより、無料のFreeアカウントでは、最大1,000点までしか写真の保存ができない為、その超過分を2019/3/12に削除されることとなりました(当初アナウンスでは2019/2/5に削除予定だった)。

尚、CCライセンスで登録された写真は削除対象に含めないことも発表されています。

 

■2019年3月:Flickrログインに米国Yahoo!のIDが不要となる

当初、2019年1月から実施予定だったログインに米国Yahoo!のIDが不要となる仕様変更がようやく行われ米国Yahoo!と資本的にもシステム的にも完全分離を果たします。

 

■2019年3月:「in memoriam」アカウントを新設

死亡したユーザーの投稿写真を無償で継続保存(凍結)する「in memoriam」サービスが新設。亡くなったFlickrメンバーの有料Proサブスクリプション期間失効後もアカウント内の写真(=非公開写真を除くパブリックコンテンツのみ)が継続保存されます。尚、申請には亡くなったアカウント保有者との法的権利を持つ家族などの証明が必要。

 

■2019年5月:初の大規模メンテナンス実施

Flickrは数億GBもの写真とビデオのデータ、1億以上のユーザーアカウントを扱っており、処理レスポンスの低下や不安定さが問題視されていました。これを解決すべくSmugMug社はFlickrをAWS(Amazon Web Service)に移行することを決断します。

Flickrのサービス開始から、これほど大規模なメンテナンスが行われることは初めてであり、実に12時間にも及ぶサービス停止の末、無事に完了しました。

 

■2019年8月:有料プリントサービス「Prints」機能が追加

有料プリントサービス「Prints」機能が追加されます。このサービスは日本からも発注可能ですが、私は未だ試したことがありません。

 

■2019年12月:SmugMug社のCEOから悲痛な緊急メール

Flickrユーザーに向け、SmugMug社のCEOから長文の緊急メールが届きます。より多くの人に有料Pro会員になるよう促す内容です。

要約すると「Flickrは2年前、年間数千万ドルにも及ぶ赤字を出していた。何百億もの貴重な写真を守るため、SmugMug社はFlickrを買収し救った。FlickrをAWS(Amazon Web Service)に移行するなどのアップデートもしてFlickrの安定化と高速化を果たしてきた。何十万人ものFlickrユーザーが有料Proアカウントに参加してくれた。しかし、Flickr事業を継続するにはもっとキャッシュが必要だ。もっと多くの有料Proを利用してくれるユーザーが必要だ」


一部ユーザーは懐疑的な態度を取るものの、この知らせを受け熱心なFlickrユーザーは周囲に有料会員を呼びかけるなどしたようですが、効果は限定的だったようで翌年の料金プラン改訂(値上げ)に繋がります。


【2020年 SmugMugは本当にFlickrを支えられるのか】

前年末にSmugMug社のCEOから「もっと有料Pro会員を増やさないと維持できない!」と泣きが入ったFlickr。年明け早々に大胆にも2度目の料金プラン変更(=値上げ)が発表されます。

折しも2020年は新型コロナウィルス感染拡大に伴う世界規模での停滞に陥っており、果たしてFlickrがいつまでサービス継続ができるのか、心配が尽きませんでした。

 

■2020年1月:唐突な料金プラン変更で値上げ

突如、有料Proアカウントの料金が値上げされます。従来は月額($5.99)もしくは年契約($49.99)の2つしか無かったのが、月額$1の値上げと共に4つの有料プランに変更となりました(また、いままで最初期の有料Proアカウント(年額$24.95)を継続更新することで、昔の料金をキープできたのですが、それも継続更新が不可となります)。


  ・1ヶ月契約($6.99)※従来より$1の増額

  ・3ヶ月契約($18.99)

  ・1年契約($59.99)※従来より$10の増額

  ・2年契約 ($117.99)

私は昨年、有料Proアカウントを1年契約をしていましたが、Flickr応援の意味を込めて追加2年契約を申し込みしました(これで2022年11月まで先払いしたことになる訳ですが、果たしてそれまでFlickrが事業継続しているのか・・・と当時は不安になったものです)。

 

・「Explore」のアルゴリズム変更

Flickr内で話題となっている質の高い写真やオススメ等を表示する「Explore」機能のインフラをAWS(Amazon Web Services)に変更してパフォーマンス向上させるのと同時に、Explore選別のアルゴリズムも変更されます。

元々のExplore選別アルゴリズム基準も不明でしたが、Flickrによると新しいExploreアルゴリズムでは閲覧数やお気に入りの数の他、コメント等を総合的に判断してリコメンドされるように変更されたそうです。

加えて特定の旬なトピックスやテーマに焦点を当てた手動でのキュレーションである「takeovers」も追加されます。takeoversは毎月開催され、より質の高い写真をリコメンドしてくれるとの事。

  

【2021年 小規模な機能強化】

この1年、世界的に新型コロナ拡大の影響を受けて経済活動の停滞からどう回復していくかの時期でした。Flickr上に投稿される写真も徐々に増えて行くものの、まだ誰もいない風景写真や野鳥などの動物写真が目立つ時期だったのを記憶しています。

 

■Notification Center(通知センター)の機能強化

Flickrユーザーがログオン時に表示される「Notification Center(通知センター)」の表示機能が仕様変更されます。具体的には通知の種類が増えてグループ管理者専用のタブが追加された他、通知センター内からメッセージの返信を行える等の機能強化がありました。

  

【2022年 非営利団体Flickr Foundation設立】

2022年、Flickrは非営利団体「The Flickr Foundation」を設立します。従来の民間企業としてのサービスと並行してクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの写真など社会的・歴史的に意義のある写真の恒久保存を目的とした活動を始めます。

 

■非営利団体の設立

Flickrは非営利団体「The Flickr Foundation」を設立します。この非営利団体の目的は、Flickr上に保存されている社会的・歴史的・文化的に重要な写真を将来世代に遺すことを目的としています。

The Flickr Foundationの主な活動には、コンテンツのアーカイブ、キュレーターの育成等があるようです。ベースとなるのはFlickrが持つ膨大な写真ライブラリ。このライブラリを維持し、共有文化財としての役割を果たすことを目指しています​。

The Flickr Foundationは「100年後に遺す」を唱えていますが、1984年に小西六写真工業が「サクラカラー百年プリント」を発売したのを思い出します。銀塩写真の時代、プリントした写真は暗所で大切に保管しておけば100年くらい褪色せずに保つのでしょうが、写真がデジタル化された途端に複写は容易であれど長期保管に疑問符が付いてしまうのは意外でしたよね。

なにより毎年のように深刻な経営難に直面するFlickr自体の永続を切に願う訳ですが果たして。


  

【2023年 小規模な改善】

2023年はFlickrのごくごく限られた改善に終始しました(有料Proアカウントへの提供サービス向上やFlickr自体のCO2排出量削減など)。

FlickrユーザーのひとりとしてFlickrに望むべきは現行のサービスが永続してくれる事に尽きます。正直、足りない機能などは無く、あとは経営とサービス運営が安定してくれればそれ以上は望まない心境です・・・


■「Climate Neutral Certification」の取得

Flickrは企業としてClimate Neutral Certification(クライメイト・ニュートラル認証)を取得します。この認証は企業活動の中で生じるCO2を基にカーボンニュートラルを目指す取り組みです。排出削減とカーボン・オフセットを組み合わせて温室効果ガスの排出量全体でカーボンニュートラルを達成しているかどうかを検証し、これが認められた場合にNPO法人より認証を受けるというもの。

 

■Flickr Proの機能強化

地味ですが有料「Pro」アカウントの機能強化として、最大6K解像度までの高精細表示や、アップロードできる動画を従来の3分から10分まで拡大する等の一部機能強化を行います。


  

【2024年 Flickr、20周年記念】

2024年に設立20周年を迎えたFlickr。記念イベント等が開催されます。これまで幾度となく経営と運営の危機に瀕してきたFlickrが20年の節目を迎えられたのは、ユーザーの一人として感慨深いものがあります・・・。

 

■Flickr20周年イベント

Flickr20周年を記念し、有料「Pro」アカウントの特別割引の他、Flickrのテーマカラーであるピンクとブルーを基調とした写真コンテストの開催などが開かれます。


他にも2024年2月24日にはサンフランシスコのベイエリアでフォトウォークのイベントも実施。他にもロンドンやウィーン等の各地でも開催されたようでした。

 

■2024年5月:現在の有料プラン料金

度重なる料金プランの改訂を行っているFlickr。現時点の料金プランは下記の通り。

無料「Free」プラン

  ストレージ: 写真とビデオは1,000枚まで

有料「Pro」プラン

  月額:$9.49

  年額:$72.99 (International dollar:$80.99)

  2年間::$132.99(International dollar:$143.76)

有料Proプランの特典として以下があります↓

  ・広告表示なし

  ・無制限のストレージ: フル解像度で無宣言に写真をアップロード

   ・非公開(プライベート)コンテンツの無制限アップロード

  ・写真やビデオの閲覧に関する詳細な統計情報の取得

  ・ 最大6Kの解像度で写真を表示可能

  ・10分以内の動画アップロード

  ・様々な写真関連サービスや製品の割引

日本は正式サポートの国では無いので有料「Pro」プランの契約時には「International dollar」適用の年額$80.99となるため、執筆時点(2024年5月)の円相場1ドル=158円で計算すると約12,800円となります。結構な金額ですよね・・・。

     

【最後に:なぜ、Flickrなのか】

私がFlickrを愛して止まないのは、あらゆる意味で「写真ファースト」な点。様々な写真共有サービスを有料/無料共に試してきましたがFlickrを超えるものはありません。たとえFlickrのコミュニティが崩壊しかかっていても写真をシンプルに愉しめる点においてFlickrは過去一貫して類似サービスよりも長けていると考えます考えます。

GooglePhotosよりも高機能だけれどもSmugMugほど本格的ではない、日常の記録をシンプルに美しく残し共有できる場所としてFlickrの永続を心より願っております。〔了〕