撮像管のエモさ


映画「AKIRA」(1988年)で印象的なシーンと言えばバイクのテールランプが残像として残る表現ではないでしょうか。


通称「コメットテール(Comet Tail)」と呼ばれる残像現象は「撮像管」という被写体を電気信号に変換する真空管を用いた古いビデオカメラで明るい光源を撮影した際に生じる独特な残像現象です。

1980年代後半にもなると撮像管から半導体を用いた固体撮像デバイス「CCD」への置き換えが急速に進んだ事でコメットテールはとりわけレトロな印象を受けます。

 

斉藤由貴 Yuki's Tour "One > Two" (1990) VHS Music Video.

先日、VHSテープの映像を取り込む為に久しぶりにビデオデッキで再生してみました。私が40年近く「推し」ている斉藤由貴、1990年のライブ映像「OneTwo」


収録された映像には上記のようにステージ照明のコメットテールが盛大に出て来ます。

 


カメラワークに併せて波打つコミットテールの美しさ、エモーショナルさが素晴らしい。

ライブ映像は1990年に収録されたものですが、当時は未だ撮像管を用いたビデオカメラが用いられて時代です。とりわけ当時のCCDカメラは光感度が低くダイナミックレンジが狭い上に動きの速い被写体を追うのが苦手でしたので、ステージ映像を収録するには往年の撮像管カメラが適していたものと考えます。

 

私、高校時代の部活動(放送部)で撮像管カメラを扱った経験があります。当時(1990年代初頭)既に珍しかった「Uマチック(U規格:通称シブサン)」のビデオカメラで、当時普及していたCCD搭載のVHS(VHS-C)や8ミリビデオカメラで撮影した映像より高画質だったのを記憶しています。

 

オーディオ趣味の世界では真空管アンプのレトロな音色が好まれるように、映像の世界でも真空管を用いた撮像管のレトロな映像が好まれる日が来るかも(?)知れませんね。[了]