アイアンドームなんて要らない


イスラエルのミサイル迎撃システム「アイアンドーム」が一定の成果を(分かり易い派手さで)あげた事で「日本にも導入すべき!」なる主張がSNS上で散見されます。果たしてアイアンドームを日本に配備して効果は期待できるでしょうか?

軍事オタクの一人として大いに疑問が湧き、このモヤモヤを記載してみました。



イスラエルの迎撃システムは短距離「アイアンドーム」(射程70km)、中距離「ダビデスリング」(同300km)、長距離「アロー2及び3」(同2000km)の3層防御構造。


冒頭写真にある複雑な軌道を描き撃墜する「アイアンドーム」が注目を集めた訳ですが、このシステムは低速度・低高度・短距離なロケット砲弾迎撃に特化している点を忘れてはなりません。

 

一方、島国・日本への攻撃には高速度・高高度・長距離から打ち込んで来る「弾道ミサイル」や「巡航ミサイル」(それも核弾頭の使用)が想定され、アイアンドームでは能力不足です。


自衛隊は既に「中SAM」(射程50km)及び「PAC-3」(同20〜35km)という、より高精度なミサイル迎撃能力を有しており、アイアンドームは不要と考えます。パフォーマンスの機会が無いだけで日本には既に最適な迎撃システムが配備されているのです。

 

Japanese Maritime Self-Defense Force warship.

ただし、自衛隊のミサイル迎撃は「能力」(必要となる技術的・運用的な要素)を有していても、「実力」(実戦闘で効果的に発揮され得るか)は大きく劣ると考えます。なにせ敵対する国が保有するミサイルの弾頭数に比して、迎撃ミサイルの数が桁違いに足りません(!)。

かと言って迎撃ミサイルの保有数を増やすのはナンセンス。なぜなら高精度な迎撃ミサイルであっても100%の迎撃は不可能であり、仮に核弾頭が1発でも東京都心部等に着弾すれば事実上の「負け」となる(=日本は敵国に同等ダメージを与える大量破壊兵器を有していない)為です。

迎撃ミサイルはあくまでダメージ最小化の最後の手段、いわば「真剣白刃取り」に過ぎません。ましてや敵国が迎撃困難な「極超音速ミサイル」配備を進める昨今では抜本的な戦略見直しは不可欠と考えます。

 

最強の軍隊を持つ米国でさえ迎撃ミサイル保有は極めて限定的。米国の持つ最大の抑止力は今も昔も「相互確証破壊」(核攻撃を受けた際、相手国を確実に破壊可能な報復核戦力の保有)なる“恐怖の均衡“に頼っているのが現実なのですから。

つまり、日本が本気で国防を考え、且つ唯一の被爆国として核の惨劇を二度と繰り返さない為には「日本の核保有」が唯一の現実解なのです。


※「敵基地攻撃能力」もとい「反撃能力」は日本の核武装より非現実的と考えます。敵基地への攻撃を「憲法の定める自衛権の範囲」と強弁するには無理があり、なにより海を超えた相手国への継戦能力は(相手国が大陸間弾道ミサイルを有するのであれば尚更)難儀です。何より実際の戦闘を交えることもあり、憲法9条や平和安全法制から考えて国民のコンセンサスを得にくいと考えます。

※むしろ法的拘束力を持たない「非核三原則」を撤回(!)し、実戦闘を避ける意味での抑止である「相互確証破壊」を実現する方が今となってはハードルは低いのではないでしょうか。「原子力基本法」の「平和の目的」にも適合するでしょうし、核拡散防止条約(NPT)だって(北朝鮮がそうしたように)条約脱退は合法的に可能なのですからね。[了]